第10話 『金の斧』をリメイクしてみた

「次は『金の斧』なんてどうかしら」


『金の斧』

『金の斧、銀の斧』などの名称でも知られている作品。

 斧を落としたきこりが女神の問いに正直に答えるか否かで結末が変わる教訓ものだ。


「斧で殺害されるとかはないだろうな」

「そんなことする訳ないじゃないの」


 怪しい。

 まあ、そっちの方向へ行くなら止めるだけだが。


「『昔、ある男が川の傍で木を切っていました』」

「待て、泉じゃないのか」

「調べてみたら川の傍らしいわよ。女神も川にわざわざ飛び込んで斧を探してきてくれるのよ」


 そいつは知らなかった。


「『しかし、きこりは手を滑らせ、斧を川に落としてしまいました。困り果てていると女神が現れました』」

「で、斧を拾ってくると」

「『すぅ~……はぁー! どぼん!』」

「息を止める描写を入れるな!」

「リアル志向?」

「リアルすぎる」


 突然人間臭くなった。


「『ぜえ……ぜえ……あなたの……落としたのは……ゴホッゴホッ! この……うぉえ~……』」

「休め!」

「『コホン。失礼しました……あなたの落としたのは……』」

「もう一度斧を探してくる描写が見苦しいからまとめて一度でやってくれ」

「仕方ないわね……『あなたの落としたのはこの……成金趣味の派手な斧ですか?』」

「待てい」

「『それとも職人芸で作られたいぶし銀の斧ですか?』」

「金と銀を改変するな」

「『いえ、落としたのはどちらでもありません』」

「きこりは正直なままか」

「『ただ……あなたの瞳に恋に落ちました』『まあ』」

「『まあ』じゃねえよ!?」

「『もー、正直者め!』『女神はきこりの正直さに感心して、三つの斧全てをあげました』」

「ホストに入れ込んだ客かよ!」


 チョロすぎるだろこの女神。


「『それを知った別のきこりは斧をわざと川に落としました。女神が同じように尋ねると、そのきこりは全部俺のものだと答えました』『……』」

「ん?」

「『他に何か言う事は?』『えーっと……特に?』『焦れた女神は言いました。「ワタシ、綺麗?」』」


 口裂け女かよ。


「『えーっと、綺麗なんじゃないか?』『……心がこもってなーい―!』」

「泣き出すな!」

「『そんなあなたには成金趣味のオヤジといぶし銀のオヤジをあげます』」

「怖いわ!」

「『今晩君を買おう』『ワシのテクに溺れな』」

「ホモ要素を入れるな!」

「『そしてきこりは斧も大切なものも失いました』」

「言わんでいい!」

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