第14話 『羅生門』をリメイクしてみた
「読みやすい話って大切よね」
「それを否定はしないが……」
「もうちょっとライトな表現で語ってもいいと思うの」
メロスをチャラい若者にしてしまった輩が何を言う。
「今回は『羅生門』よ」
「これをライトな表現だと……?」
「だって全体的に重苦しいじゃない」
「そういう作風だろ」
『羅生門』
主人に暇を出され、このままでは餓死してしまう状況に追い込まれた下人が平安京の羅生門で死体から髪を抜いている老婆と出会う。
会話の中で「生きるための悪」と言う感覚に下人が目覚めるという人間のエゴイズムを現した作品だ。
「『いっけなーい、雨宿り雨宿り!』『わたし下人。主人から暇を出されたばかりでさまよって四、五日。今は羅生門に雨宿りにやってきたの』」
「少女漫画風にするな!」
「『このままだと餓死しちゃう……でも、盗人になるだけの勇気が私にはない。お願い神様、私に勇気をください!』」
「さらっと怖いことを言うな!」
何だこの愛嬌がありながらブラックな事を平気で宣う下人は。
「『楼の中には死体がいっぱい……あれ、猿みたいなおばあさんが死体から髪の毛を抜いている。こんなの、絶対に許せない!』」
「お前がむしろ芥川に怒られるわ!」
名だたる文豪の方々に俺は今、猛烈に土下座したい。
「『あ、私に気づいた! おばあさんが逃げちゃう!』『おのれ、どこへ行く。』」
「台詞は原作通りかよ!?」
ギャップがありすぎて怖い。
「『老婆を取り押さえた私は何でこんなことをしたのか問い詰めたの』『何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。』」
「せめて口調は揃えろよ!」
「『私、検非違使なんかじゃない! ただ、何をしていたか知りたかっただけなの。だからおばあさんを問い詰めたの』『髪を抜いてカツラを作ろうとしたのよ』『カツラだと?』『確かに死人の髪を抜くのは悪いことかもしれないわ。だが、そうしなければ餓死するしかない。こいつも大目に見てくれるはずよ。アーッハッハッハ!』」
何故だ。ナレーションのせいで少女漫画風のタッチでイメージしてしまう。
「『その時、私の中にある勇気が生まれてきたの。何……もしかして、これが「闇の心」?』」
「中二病かよ!?」
「『私、おばあさんの話が終わると襟首をつかみながら噛み付くように言ったの』」
可愛くても言ってることは物騒だ。
「『では、俺が引剥をしようと恨むまいな。己もそうしなければ、餓死をする体なのだ』『ああ、何をなさいます!』『よいではないかよいではないか!』『あーれー!』」
「老婆でやるな!」
イメージしたくない。
「『おばあさんから服を奪った私はそのまま夜の闇に消えちゃった。てへ』『下人……恐ろしい子』」
「お前の方が怖いわ!」
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