皇帝-02
流石に船を仕立てることは出来なかったけど、僕らは運良く急ぎの荷を積む高速船に乗り合わせることが出来た。
風使いを3人雇って数時間ごとに交代で船を走らせるこの高速船は、魔法の力で起こした真っ直ぐな東向きの風に乗って、わずか2日で天帝国ジラードの港町「クレフ」に到着した。
世界中の言語が王国の共通語に統一されてから既に30年。それでも未だに、細かいニュアンスが大事な商売上の話や王国語教育を正しく受けた世代ではない荷降ろしなどの現場では、現地の言葉が飛び交っている。
港にはそれぞれの船が所属する国を表す色とりどりの旗が揺れている。
その向こう側にまっすぐ伸びる広い道路には石畳が敷かれ、淡いピンク色の花が咲き乱れる街路樹が見渡す限り続いていた。
僕達の住む王国とは違い、主に木で作られた曲線と直線の入り混じる建物は魅力的で、僕はカードとは関係なく、この風景を描いてみたいと思った。
外国に来たんだな。
僕が感慨にふけっているその横で、フランチェスカはキョロキョロと辺りを見回しては「うわぁ……うわぁ」と控えめな感嘆の言葉を漏らしている。
特にこの国の女性が身につけている花や鳥、風景がきらびやかに織り込まれた衣服に感銘をうけたようだ。
見つめる僕の視線に気づいたフランチェスカは、僕の腕に自分の腕を絡ませる。
「きれいな国ね!」
「そうだね。活気もあるし、清潔だし、何より平和そうだ」
お互いにニッコリ微笑むと、僕らは入国の手続きをする役所っぽい所を目指して歩き始めた。
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