読み終わったばかりでレビューを書くので少し興奮している。ウェブ小説ではいろいろな作品を読んできて、当たり外れはそれなりに見てきたつもりだが、今回はというと、間違いなく「大当たり」だったと思う。
気になる内容については、あまり語りたくない。内容が不快だったり、問題があったりするからではない。これは、先入観なしで読めば読むほど、いろんな意味で堪能できる作品だからだ。ホラージャンルということでそのジャンルの要素が強いが、それ以外にもミステリーや伝奇要素も混じっている。それらが上手く交配されて、次第にのめり込んで読んでしまうほどの吸引力と感受性を引き出していた。
ジャンルがホラーということで、怖いものが苦手な人は避けたいと思うのは分かる。筆者も怖がりなのであまり読みたくなかったのだ。しかし、読み始めると続きが気になり、真相や展開が気になって読むのを止められなかった。それだけ面白い作品であり、力作である。☆3点じゃたりないくらいである。
どうか、騙されたと思って読んでほしい。そして騙されて欲しい。ただのホラー作品だと思ったら、「ただの」じゃなかったことに。ウェブ小説でここまでの作品にあえるのは、貴重だと感じている。
一話目から、あっというまに物語の中に引き込まれました。
圧倒的な文章力はもちろん、情景描写、改行の使い方、傍点の打ち方、すべてにおいて素晴らしく、詰まることなくすらすら読み進める事ができます。ホラー要素だけではなく、ミステリー要素もたっぷり仕込まれていて、この後どうなるんだ、どうなるんだ、と、ページをめくる手を止めさせてくれません!危うく電車で乗り過ごすところでした。
今の時点で連載されている八話分までのレビューになってしまいますが、本当に素晴らしいので、三つ星を送らさせていただきます。
これからの展開が楽しみです!素敵な作品をありがとうございます。
山間の因習残る村を舞台にした『本格民俗学ホラー』だと思って読み始めたはずだ。はじめは。
田舎の村はよくこういった物語の舞台に選ばれる。
その理由は、奇妙な事件ーー多くが古くから伝わる呪いを前提にした悲劇ーーにおいて、『閉鎖的な独自文化の設定』が容易で、『治外法権的な恐ろしさ』が根底にあるから、らしい。
ところが、本作の厄災は村の枠組みをあっけなく越える。呪いなんて非科学が笑いごとになる現代的な価値観の、警察機関の公正な目が行き届く『日常』へと伝播していく。
まるで主人公一可を追うように。
別個の悲劇が一つづきに繋がるとき、すべての事柄の奥にぼんやりと真っ赤に暗がる眸がよぎる。
赤い闇の淵を見てしまったが最後、すべては螺旋階段を転がり落ちていくように悪化していく。
村に秘された『血眸さま』。厄を祀りて神となす逸話は古今東西数あれど、血脈に式を張って奉ずるほど強いのか、それとも…?
どこまでが真実で、どこからが異説なのか。徐々に確信に迫る展開に目が離せない。
こっっっっっっっっっっっっってりした伝奇ホラーです。
現代伝奇だったら主人公が死を視る魔眼に覚醒して悪い奴らをバッタバッタ切り倒すのですがこれはあくまでホラー物。そんな展開は有りません。
ただ、奈落へ続く坂道を無限に転がり続けるだけの何処にでも居る普通の善人の悲劇がそこに在るだけです。気味の悪さ、ざわつく不快感、ホラー好きならニヤリとさせられる描写。
恐怖に震える指をマウスへ伸ばし、物語を読み進めた先に有るものが何か、貴方も確かめてみませんか?
2017/02/01 追記
もう最終回を迎えたので、全体を踏まえた紹介も。
幸せなもの、優れたものが奈落に落ちることこそが悲劇の本懐です。この作品はその王道から離れず、まっすぐに奈落とその先へと向かう姿を見せてくれることでしょう。
他の方のレビューを見て、興味を抱き、拝読しました。
色々と語りたいことは沢山あるのに、ネタバレになってしまうので、書けないことが多過ぎてもどかしい。
これでは、正にあれの存在に囚われている村人たちではないか。
秀麗な文章で綴られる暗澹たる日々というサブタイトルそのものな陰惨でじめじめとした異形の世界。愚かな人間の性。歪んだ愛と肉欲。
格調高きジャパニーズホラーの王道です。
若干、大人向けかもしれませんが、web小説を青少年向けだけに限ることはないと個人的には考えておりますし、カクヨムには『大人も読めるweb小説』を世に出して貰いたいと期待しておりますので、是非とも、一次選考を突破して貰いたい作品です。
田舎の村。古くから伝わる伝承。村の名家である三つの家。
物語は、主人公の青年が祖母の葬儀のために久しぶりに田舎に帰ったところからはじまります。
そこで主人公が目にした、赤いもの……それが、はじまりでした。
田舎のねっとりとした濃い闇の中にとらわれて抜け出せなくなるように、ひたひたと迫る闇にまとわりつかれるように。
この物語の恐怖は忍び寄ってきます。
はたして。その恐怖の正体とは。
ジャパニーズホラーの神髄を、じっくりと味わってみてください。
私は夜中に一人で読み始めたことを後悔しました。布団の中に入って読んでたって怖いです。だって、あいつは布団の中にだってやってくるんですから。
何書いてもネタバレになるタイプの作品です。
民俗学的な要素を組み込んだホラーかな?グロテスクな描写もある猟奇ミステリーかな?
それらの側面も確かにありつつ、個人的には今作はSFにも近しいタイプの作品だと思いました。
陰鬱なる『闇』の描写、心臓が跳ね上がるサスペンスの毛色。そして複合したジャンルを破綻させることなく、最後にはジャンル詐欺にならない「こっわぁ……」と言わせる技量。もっともっと評価されるべき作品だと思いました。
夜に一気読みして欲しいですが、あんまりオススメもできないやり方ですね。
構成、キャラ、描写。どれを取っても隙のないハイクオリティな作品でした。何よりもこの濃い密度の情報量を10万文字に収めたのが凄い。
山間の古い村に住む祖母が死んだ。
白い猫と枯れた老人に出会った。
血の色の右眸を持つ奇怪な少女を見た。
そして、惨劇が始まった。
青年、近衛一可は、ねっとりと濃い闇の中で大切な幼馴染を失い、
幼馴染の記憶さえもが人々から失われたことを知って愕然とする。
都会に帰っても誰にすがっても、血の色の眸が追い掛けてくる。
親友と老刑事の手を借り、一可は村の歴史を紐解くこととなる。
愚か者《ふーけもん》の来訪者たちに三家の秘密を語る翁を始め、
村の年長者たちがしゃべる九州弁が、民話的な不気味さを煽る。
私は九州でも西の離島だが、玖契村は本土南部の内陸だろうか。
元来、九州をフィールドとする民俗学は、独特な凄惨さを秘める。
私の郷里には隠れキリシタンのどうしようもない因習があり、
半島や大陸の文化と言語を今に伝える海賊のコロニーがあり、
原城の乱で全滅せられた島原には四国からの入植者の集落があり、
隔絶された山の中には壇ノ浦を逃れた平家の落人の村がある。
海で他所と繋がる九州には、いつも、外から何かが入ってきた。
それらが『日本書紀』『古事記』『風土記』の頃からの土着のものと
交じり合ったり結び付いたりして、一風変わった何かに変じる。
古くエキゾチックで得体の知れないそれらは、大抵けっこう怖い。
玖契村もそう、訪れたものを古くからある力によって留め、
雁字搦めの因縁へと変じさせる類型に当てはまるけれど、
ミステリー作家によって示される21世紀的な「それ」への解釈は、
SF的な規模を伴って、人間に対処し得る限界を突破する。
赤く染まるクライマックスに、呑まれて喰われるのではなく、
子宮の胎動を直感的に想像した、その瞬間が一番おぞましかった。
民俗学的な怖さに耐性があり、グロテスクな流血系には動じない。
でも、本作読了後、ホラーはしばらく読まなくていいと思った。
喰らった情報量に、まだ感性が追い付いていない。
ホラー作品で満足するとは、つまりこういう状態なんだろう。
不可解で理不尽で狂気的で、わかろうとしてはいけない相手。
もうたっぷり堪能したから、ホラーはしばらく読まなくていい。
人里離れた寒村。
閉鎖的な人々。
いわくありげな伝承。
謎の建築物……。
はい、全部そろいました! 始まり、ドンっ!
という物語です。
……などと軽く紹介したいところなんですが、
そうは問屋が卸してくれない作品です。
私は作者のものにはほとんど目を通したので
なんだか代表のように言いたくなるのですが、
そこは必死に抑えて語りますと……
今作も、まずもって彼の特徴であるところの
○言葉遊びのうまさ・楽しさ
○難読字・当て字の多用
⇒これらの積み重ねによる、独特な言い回し
が乱れ打ちになっております。
それにより、衒学的というか退廃的というか
特徴的な世界が成立しているわけです。
その世界(舞台)を、これまた独創的な
登場人物やアイテムといった道具立てが彩ります。
さりとて、横溝正史みたいに暗くはなく。
これを私は勝手に「雪車町ワールド」と
呼んでいるわけですが、それだけでも
誰にでも楽しめる読書体験になると思うわけです。
加えて、今回は特に
○ストーリーテリングの妙
も燦然と加わります。
次々と展開する出来事の「引き」は強いし、
大したことが起きていない場面でも
読者はグイグイと引っ張り込まれっぱなし。
これだけで、完成品じゃないですか。
完璧じゃないですか。
――ね?
さて。今作はホラーです。
血が飛び散ります。大量に。
ほかのレビューにも「夜には読むな」とあります。
でも私は正直、そんなに怖くない。
というわけで、カクヨムに発表する以上
ジャンル選択をしなければならず、
しょうがないからホラーを選んだのだと
勝手に解釈しておきたいと思います。
この作品が入るべきジャンルがあるとするなら、
間違いなく「力作」でしょう。
それしかありません。読むべし。