読者は独特な世界を体感せよ。作者は早く戴冠せよ。

人里離れた寒村。
閉鎖的な人々。
いわくありげな伝承。
謎の建築物……。

はい、全部そろいました! 始まり、ドンっ!

という物語です。

……などと軽く紹介したいところなんですが、
そうは問屋が卸してくれない作品です。

私は作者のものにはほとんど目を通したので
なんだか代表のように言いたくなるのですが、
そこは必死に抑えて語りますと……

今作も、まずもって彼の特徴であるところの

○言葉遊びのうまさ・楽しさ
○難読字・当て字の多用
 ⇒これらの積み重ねによる、独特な言い回し

が乱れ打ちになっております。
それにより、衒学的というか退廃的というか
特徴的な世界が成立しているわけです。

その世界(舞台)を、これまた独創的な
登場人物やアイテムといった道具立てが彩ります。
さりとて、横溝正史みたいに暗くはなく。

これを私は勝手に「雪車町ワールド」と
呼んでいるわけですが、それだけでも
誰にでも楽しめる読書体験になると思うわけです。

加えて、今回は特に

○ストーリーテリングの妙

も燦然と加わります。

次々と展開する出来事の「引き」は強いし、
大したことが起きていない場面でも
読者はグイグイと引っ張り込まれっぱなし。

これだけで、完成品じゃないですか。
完璧じゃないですか。

――ね?

さて。今作はホラーです。
血が飛び散ります。大量に。
ほかのレビューにも「夜には読むな」とあります。
でも私は正直、そんなに怖くない。

というわけで、カクヨムに発表する以上
ジャンル選択をしなければならず、
しょうがないからホラーを選んだのだと
勝手に解釈しておきたいと思います。

この作品が入るべきジャンルがあるとするなら、
間違いなく「力作」でしょう。

それしかありません。読むべし。

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