物語のタイトルは読者との最初の接点です。
内容をストレートに伝える長文タイトルが流行する中、暗喩やキーワードとなる言葉が使われていると「どんな物語なんだろう」と読む前に想像してしまいます。これは読書の楽しみの一つと言えるのではないでしょうか。
この作品、私はタイトルを見てもどんな物語か思い浮かべることができませんでした。
すべてカタカナで表されたシャープな印象。ストライプ――縞模様? バディものかな。そんな思いを抱きながら読み始めると……そこには文字通り、素敵なコトノハ(言葉)が並んでいました。
軽くなく、重すぎず、キレのある文体で引き込まれていきます。
ストライプの意味するところもお洒落。
色彩による視覚面だけでなく、言葉のやり取りそのものが縞模様を感じさせます。
どんな話か分からない?
それは、みなさんに読み進めて欲しいから。
さわやかな読後感を得られるとだけ、お伝えしておきましょう。
言葉というものにはなにかを繋げるちからがあるとおもっています。
例えば挨拶ならば人と人を繋げ、手紙ならば遠い距離…時には時間までもを越えてこころを繋げたり、小説ならば現実とは違うせかいに繋げる扉になったり。
これもまた、言葉が、ふたりの少女を繋げる物語です。
図書室の本棚に《しりとり》とだけ書かれた一冊のノートを発見した《わたし》はそこに言葉を書き入れます。見果てぬひととの言葉の交換。はじめはただの奇麗な響きの単語だけのやり取りでしたが段々と言葉は長くなり、遂には磨きぬかれた二十二文字の詞となるのです。
それらの詞は音楽のように時にあまやかに、時に激しく、綴られていきます。二重奏のように絡まるふたりの《繋がり》――《わたし》は想像せずにはいられません。紙のむこうにいる《誰か》を。
そうしてそれは、読者もまたおなじ。
情緒あふれる美しい文章で綴られる青い春。秘密めいた言葉の流動。そうして青く、瑞々しい少女の成長。
線をひき、線が結ぼり、線は解かれる。
ため息が洩れるほどに堪能させていただきました。
ああ、藍色の流麗な文字が、いまにも目蓋の裏に浮かんでくるようです。
はたして、自分はこのような作品をいつかは書けるのだろうか?
まずはそんなことを考えました。
静かな足取りで、けれどもあたりの視線を奪い去る人のような文章と物語。
この作品をあらわすなら、そんなふうに言ってしまいそうになります。
主人公へのフォーカスは明確で、イベントは物語の進展を必要以上に主張していないように感じました。
つまりは、どこをとってもわざとらしさを感じさせない造りをしているということです。
また、女生徒の心境や状況は端的に言い表されていて無駄な言葉はありません。
そして何より、しりとりの文句がどれも美しいです。
この部分だけを読み進めていくだけでも面白いのではないでしょうか?
美しい言葉と繊細な感性が、心の中に彩を残す。交換ノートとしりとりでつながる少女たちの、青春の一コマを描いた短編です。
できれば縦読みビューワーで。背景は水色が似合うでしょうか。
しりとりって、友達と暇をつぶすだとか、他に遊びを思いつかないときなんかにするもの、というイメージがあります。単語を言い合って、苦しくなってきたら罠を仕掛けてみたりして、なんとなーく暗黙のルールを作っちゃったり。
交換ノートで、しりとりをしようって発想は、まずないですよね。
この物語では、すでに詩か歌にまで磨かれた二十二文字が、和歌と返歌みたいな美しさで並んでいきます。ときに相手を探り、ときに激しく想いをぶつけ、ふたたび穏やかにたゆたう言葉のストライプ。
カラー印刷の製本でぜひ見てみたい。あるいは縦書き対応のホームページでも綺麗に映えるかもしれません。
焦がれて揺れる若い心と、思い切るための切っ掛けを、言葉を交わしながら探ってゆく。そんな瑞々しく清々しい青色のストーリーです。ぜひご一読ください。
続きが気になりすぎて、早く!早く!という気持ちで駆け足に読んでいました。
そして気づけば読み終わっていました(笑)
語彙力がなくて申し訳ないのですが…
「顔の見えない相手との秘密のやりとり」を題材とした話がとても好きで、わたし自身も主人公になった!くらいの気持ちで読み進めました。
隣の芝生は青いとはまさにこのことで。
でもお互いを羨ましいと感じるからこそ、お互いを尊敬しあえて、そして認め合えるのかなと思いました。みんな違ってみんないいですね!
そしてタイトルがとてもお洒落な上に、ちゃんと意味のあるものにもなっていて、素敵でした。
長くなりましたが(笑)
素敵な作品に出会えてよかったです!
ありがとうございました(*´꒳`*)
まず総論。
この作品は、「素晴らしい」です。
トーゼン、ホメたい。絶賛したい。
ホメたたえてホメちぎって礼賛称賛のつぶてを投げたいのだけれど、
これほどまでに繊細な作品を紡ぐ作者もまた繊細以上に繊細なはずで、
となると一知半解にして迂闊な私が至らぬまま野放図に口を滑らせれば
「作者が受け入れにくいタイプのホメ方」をしてしまう可能性がある。
それは、よろしくありません。
あるいは、藍色と水色の二色で精緻華麗に織り上げられた作品に
赤黒緑の不純物をふりかけて汚してしまうかもしれない。
それも、よろしくありません。
以上の理由(など)により、
レビューらしいレビューが書けない理由をつらつらと申し述べる次第ですが、
一言一句の細部にまで意識と血流を通わせた作品を読んだ直後では
「参りました」の声すら空々しく聞こえてしまうことでしょう。
「小説らしさ」とか「文芸っぽさ」とかいう語句も使いたくありませぬ。
でも、「読書の愉しみ」を存分に与えてくれる作品に出会ったとき、
読者は四の五の言う前に「よかった」とだけ思って静かにページを閉じるもの。
本作は、そういう最高に幸せな「ページ閉じ」ができる小説です。
まとめます。
――この作品は、「素晴らしい」です。
カチッと端正な文字でつづられた藍色の行。
そして私の水色のボールペンでつづった行。
しりとりだから必ず交代で現れる二つの色。
コトノハ・ストライプ。
明度の異なる二つの青が、交換日記のように知らない二人を結びつける。
人はどこかしらコンプレックスを持っている。
だけど、それは他の人には羨ましく見えることもある。
誰もが自分に無いものを求め、相手で補おうとするものだ。
羨望や嫉妬の気持ち、自分はそうなれないという諦めから、人は手を伸ばそうとしない。
でも、ほんのちょっとの勇気と思いがけないアイディアで心を結びつけることはできる。
彼女たちはそうやって手を取ったのだろう。
藍色と水色のインクで。
まず最初に、ビューワー設定を縦組みにしてください。
そうして読み始めると、主人公たちのやっているしりとりがより楽しめます。
という前置きはここまでにして……。
本作の中心となっているのはしりとりです。ただし単語のみで行う一般的なものとは違い、少し飾って長めの言葉でのやりとりとなっています。(理由は作中にて)
ノートで交換日記のようにしりとりをしているのは主人公と顔も知らない子の二人なのですが、面白いことにどちらが書いた言葉なのか分かるのですよね。主人公から見て相手がどういう言葉を使うとか、主人公はどういう性格かとか、そういうのがしっかりと、けれどさり気なく表現されているので、そんなに考えなくても「これはこの子かな?」と明確に書かれる前でも分かるのです。
それくらい登場人物の性格がしっかりと描かれているので、お互いの顔も知らない二人がどうやって出会うのか読んでいてとても気になります。
教室では人とあまりうまく付き合えない主人公。
相手がどんな人物かによっては、折角見つけた楽しみが楽しくなくなってしまうのではないか。相手が誰か知らないままの方がいいのではないか。
そんな心配を抱きながら読んだ最後の場面。流石にはっきりとは書けないのですが、それまでの主人公と相手の関係性を考えると、なんかこう……とても良いのです。何がどう良いのかはネタバレになってしまうので控えますが、とりあえず私は最後まで読んだ時に「あ、とても良い……」となりました。(語彙がなくて……)
読んだ後に晴れやかな気持ちになる、青春の1ページ。ぜひ読んでみてください。