概要
教室ではうまくいかなくて、逃げ込むのは図書室だった。
辞典類に紛れて差し込まれた小さなノートがわたしの救い。顔も知らないその子と、飾った言葉でしりとりをする。
※この作品は縦読み推奨です。お手数でなければ、ビューワーの設定「組み方向」を「縦組み」に変えてお読みください。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!この秀逸なタイトルから、あなたは何を思い浮かべますか
物語のタイトルは読者との最初の接点です。
内容をストレートに伝える長文タイトルが流行する中、暗喩やキーワードとなる言葉が使われていると「どんな物語なんだろう」と読む前に想像してしまいます。これは読書の楽しみの一つと言えるのではないでしょうか。
この作品、私はタイトルを見てもどんな物語か思い浮かべることができませんでした。
すべてカタカナで表されたシャープな印象。ストライプ――縞模様? バディものかな。そんな思いを抱きながら読み始めると……そこには文字通り、素敵なコトノハ(言葉)が並んでいました。
軽くなく、重すぎず、キレのある文体で引き込まれていきます。
ストライプの意味するところもお洒落…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それは繋がる言葉と繋げる言葉、藍のインクでひとつ《線》を
言葉というものにはなにかを繋げるちからがあるとおもっています。
例えば挨拶ならば人と人を繋げ、手紙ならば遠い距離…時には時間までもを越えてこころを繋げたり、小説ならば現実とは違うせかいに繋げる扉になったり。
これもまた、言葉が、ふたりの少女を繋げる物語です。
図書室の本棚に《しりとり》とだけ書かれた一冊のノートを発見した《わたし》はそこに言葉を書き入れます。見果てぬひととの言葉の交換。はじめはただの奇麗な響きの単語だけのやり取りでしたが段々と言葉は長くなり、遂には磨きぬかれた二十二文字の詞となるのです。
それらの詞は音楽のように時にあまやかに、時に激しく、綴られていきます。二重奏のように絡…続きを読む - ★★★ Excellent!!!濃密な一万字
はたして、自分はこのような作品をいつかは書けるのだろうか?
まずはそんなことを考えました。
静かな足取りで、けれどもあたりの視線を奪い去る人のような文章と物語。
この作品をあらわすなら、そんなふうに言ってしまいそうになります。
主人公へのフォーカスは明確で、イベントは物語の進展を必要以上に主張していないように感じました。
つまりは、どこをとってもわざとらしさを感じさせない造りをしているということです。
また、女生徒の心境や状況は端的に言い表されていて無駄な言葉はありません。
そして何より、しりとりの文句がどれも美しいです。
この部分だけを読み進めていくだけでも面白いのではないでしょう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!悩み、憧れ、揺れて、気づく。まっすぐな言葉で残そう、君と私の軌跡を。
美しい言葉と繊細な感性が、心の中に彩を残す。交換ノートとしりとりでつながる少女たちの、青春の一コマを描いた短編です。
できれば縦読みビューワーで。背景は水色が似合うでしょうか。
しりとりって、友達と暇をつぶすだとか、他に遊びを思いつかないときなんかにするもの、というイメージがあります。単語を言い合って、苦しくなってきたら罠を仕掛けてみたりして、なんとなーく暗黙のルールを作っちゃったり。
交換ノートで、しりとりをしようって発想は、まずないですよね。
この物語では、すでに詩か歌にまで磨かれた二十二文字が、和歌と返歌みたいな美しさで並んでいきます。ときに相手を探り、ときに激しく想いを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青のストライプは揺れる。
>他人の事情は見えないから、自分の痛みは強いように思う。
>そういう独りよがりは嫌いだったはずだ。
>もののわかったような顔をしながら、いちばん偏見に満ちていたのはわたしじゃないか。
この文章が一番すき。
日向にいるような子でも、陽射しが眩しくて他人には見えないことがあるのかも。
明るい場所の影は濃いから。
図書室の書棚に隠されたノート。知らない相手との「しりとり」。
交互に綴られる言葉は、やがて単語ではなく文章になっていく。
誰が書いているのだろう。
内気な主人公は詮索をはじめる。でも相手はそれを嫌う。
でも、ある日。主人公は気づいてしまう……。
ノートに書き込まれる文章もまた美…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読んだ後に自然と笑顔になれる物語
続きが気になりすぎて、早く!早く!という気持ちで駆け足に読んでいました。
そして気づけば読み終わっていました(笑)
語彙力がなくて申し訳ないのですが…
「顔の見えない相手との秘密のやりとり」を題材とした話がとても好きで、わたし自身も主人公になった!くらいの気持ちで読み進めました。
隣の芝生は青いとはまさにこのことで。
でもお互いを羨ましいと感じるからこそ、お互いを尊敬しあえて、そして認め合えるのかなと思いました。みんな違ってみんないいですね!
そしてタイトルがとてもお洒落な上に、ちゃんと意味のあるものにもなっていて、素敵でした。
長くなりましたが(笑)
素敵な作品に出会えてよかったです…続きを読む - ★★★ Excellent!!!最高に幸せな「ページ閉じ」ができる小説
まず総論。
この作品は、「素晴らしい」です。
トーゼン、ホメたい。絶賛したい。
ホメたたえてホメちぎって礼賛称賛のつぶてを投げたいのだけれど、
これほどまでに繊細な作品を紡ぐ作者もまた繊細以上に繊細なはずで、
となると一知半解にして迂闊な私が至らぬまま野放図に口を滑らせれば
「作者が受け入れにくいタイプのホメ方」をしてしまう可能性がある。
それは、よろしくありません。
あるいは、藍色と水色の二色で精緻華麗に織り上げられた作品に
赤黒緑の不純物をふりかけて汚してしまうかもしれない。
それも、よろしくありません。
以上の理由(など)により、
レビューらしいレビューが書けない理由をつらつ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ノートの中はストライプ
カチッと端正な文字でつづられた藍色の行。
そして私の水色のボールペンでつづった行。
しりとりだから必ず交代で現れる二つの色。
コトノハ・ストライプ。
明度の異なる二つの青が、交換日記のように知らない二人を結びつける。
人はどこかしらコンプレックスを持っている。
だけど、それは他の人には羨ましく見えることもある。
誰もが自分に無いものを求め、相手で補おうとするものだ。
羨望や嫉妬の気持ち、自分はそうなれないという諦めから、人は手を伸ばそうとしない。
でも、ほんのちょっとの勇気と思いがけないアイディアで心を結びつけることはできる。
彼女たちはそうやって手を取ったのだろう。
藍色と水色のイン…続きを読む