最高に幸せな「ページ閉じ」ができる小説

まず総論。
この作品は、「素晴らしい」です。

トーゼン、ホメたい。絶賛したい。
ホメたたえてホメちぎって礼賛称賛のつぶてを投げたいのだけれど、
これほどまでに繊細な作品を紡ぐ作者もまた繊細以上に繊細なはずで、
となると一知半解にして迂闊な私が至らぬまま野放図に口を滑らせれば
「作者が受け入れにくいタイプのホメ方」をしてしまう可能性がある。

それは、よろしくありません。

あるいは、藍色と水色の二色で精緻華麗に織り上げられた作品に
赤黒緑の不純物をふりかけて汚してしまうかもしれない。

それも、よろしくありません。

以上の理由(など)により、
レビューらしいレビューが書けない理由をつらつらと申し述べる次第ですが、
一言一句の細部にまで意識と血流を通わせた作品を読んだ直後では
「参りました」の声すら空々しく聞こえてしまうことでしょう。

「小説らしさ」とか「文芸っぽさ」とかいう語句も使いたくありませぬ。
でも、「読書の愉しみ」を存分に与えてくれる作品に出会ったとき、
読者は四の五の言う前に「よかった」とだけ思って静かにページを閉じるもの。
本作は、そういう最高に幸せな「ページ閉じ」ができる小説です。

まとめます。
――この作品は、「素晴らしい」です。

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