概要
【テーマ】擬態
【ジャンル】ほのぼの百合
【登場人物】殺人ブルドーザー女、ゴリラ
〈第二回こむら川小説大賞 参加作品〉 ※銀賞受賞
https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054900482535
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!病をもたらすもの
アリスという名の病がある。Alice in Wonderland syndrome、不思議の国のアリス症候群。短くアリス症候群とも言う。これに罹患した者は、世界に対する自分の大きさを正しく理解することができなくなる。おそらく脳の部分的炎症が引き起こす幻覚症状の一種であろうと今は考えられている。
上記はれっきとした、精神病理学者によって提唱された実在の精神疾患概念である。しかし次のものは違う。
ハイフェッツ症候群という言葉がある。アリス症候群が実在のアリス・リデルからその名を得ているように、ハイフェッツもまた実在の人間である。ヤッシャ・ハイフェッツ。20世紀を代表するヴァイオリニストとされ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これこそ文章
ひたすらに文が素晴らしい。
単語自体は誰もが知っているだろうものばかり。それが見たことのない連なりを成し、作者だけの言葉となって紡がれている。
日頃定型文やどこかで見たことのある文しか書けていない自分にすれば、これこそ本来の「文章を書く」ということだよなと脱帽するとともに、敗北感に打ちのめされた。人物の内面の掘り下げがしっかりしている故だろうか。
あらすじを言えば、女主人公が女友達の寝込みを襲うだけという単純なものだが、主人公の過去や友人とのこれまでのやり取りを描く順序が工夫されていて、構成も上手い。思わず「アホか」と笑ってしまうパロディ的表現も面白い。
最後に、陰毛のくだりが特に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!酔っていません。酒には。
〈特にすることもなく取り残された夕暮れの和室、安心しきった寝顔を間近に眇める私の、その胸の裡に湧き上がる未知の情動。この汚れひとつない無邪気の塊を、簡単にその身を預けてしまえる雛鳥の無垢を、でも特段の理由なく滅茶苦茶に穢してしまいたくなる、このどこまでも粗野で根源的な人間の本能。〉
小説は言葉でできている。何当たり前のことを、という向きもあるかもしれませんが、そんな当たり前になり過ぎてついつい忘れてしまうことを思い出させてくれる作品があります。例えばそうですねぇ、と例として挙げたくなる作品がひとつ増えました。「アリス・イン・ザ・金閣炎上」です。いつも大体レビューの時は簡単な導入かあらすじ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!下ネタ自爆テロ & 純情ラブソング
一言で言ってしまえば、激しい小説。
友人(女)に恋してしまった女子大生が、寝ている思い人を前にして悶々とする。
「殺人ブルドーザー女」を自称する彼女の、文字通りすべてを薙ぎ倒すようなマシンガントーク。
内面のなんだかんだをポエトリーリーディングみたいにぶちまけるスタイルに最初はクラクラするのだけど、
慣れてしまえば、あとはすらすら読める。
いや、すらすらなんてもんじゃねえ。殺人ブルドーザー女と一緒に、崖っぷちに向かって全力疾走。
しかし暴れ狂う卑猥な言葉の嵐を透かせば、彼女の孤独と悲哀が垣間見えるはず。
自分とは何か?
人を好きになるとは何か?
そういった諸々がぶつかりあって混ざり合って臨…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ウィットに富んだ文章で、思春期の生々しいリアルに引きずり込まれます
一人称の台詞回しが、文学的、且つ、エッジィなウィットに富んでいて、暴力的なまでに文章に引きずり込まれてしまいます。
語彙ひとつ、引用ひとつとっても、尖ったおかしさに溢れていて、それが矢継ぎ早にどんどん出てくるので、のめり込む以外に選択肢がありません。
ごく個人的な感覚ですが、ナウシカの引用はすごかったです……。
その、書き手の方の知識の広さ故のユーモアには、どんどん、どんどん「少女」と「女性あるいは男性」の途上にある語り手の内包する生々しいリアルが滲み出してきて、そこにある凄味に圧倒されます。
特に、序盤で何気なく語られた上京する以前のことが回収される場面では、強烈に感じ入るものがありまし…続きを読む