ウィットに富んだ文章で、思春期の生々しいリアルに引きずり込まれます

一人称の台詞回しが、文学的、且つ、エッジィなウィットに富んでいて、暴力的なまでに文章に引きずり込まれてしまいます。
語彙ひとつ、引用ひとつとっても、尖ったおかしさに溢れていて、それが矢継ぎ早にどんどん出てくるので、のめり込む以外に選択肢がありません。
ごく個人的な感覚ですが、ナウシカの引用はすごかったです……。

その、書き手の方の知識の広さ故のユーモアには、どんどん、どんどん「少女」と「女性あるいは男性」の途上にある語り手の内包する生々しいリアルが滲み出してきて、そこにある凄味に圧倒されます。
特に、序盤で何気なく語られた上京する以前のことが回収される場面では、強烈に感じ入るものがありました。
思春期の少女たちの世界は、生々しく、耽美的な危うさに充ちています。
そしてその中に縛り付けられるような閉塞感が、読み手側にまで感じられるくらいに身に迫る文章で描かれて、まったく自分とは違う語り手の焦燥が、けれど肌に感じられました。

そして、終盤の「炎上」のシーン。
笑いがこみあげてくると共に、そこには気持ちのいい解放感、カタルシスが溢れていて、まさに物語の終幕にふさわしいなと思えます。
突飛な行動にも関わらず、それを気持ちよく、楽しく、そしてリアルに感じてしまうのは、そこまでで語り手の内面にのめり込んでしまったが故でしょう。

ラストの一文まで気も利いています。
たいへん面白く、楽しく、同時に皮膚にジリジリとしたものを感じられて、読んで良かったと思える作品でした。

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