徹頭徹尾、「妹が分裂、増殖していったら」というアイディアを形にしていった作品。
最初は二人、それが四人、八人、十六人と日ごとに増えていく妹。そりゃ家にも入れなくなるし服も足りなくなるし食料も足りなくなるし学校なんか行けないし――と身近な悩みが丁寧に描かれて、主人公の苦悩に感情移入できた。
それも一晩経てばさらに倍になるわけで、この先が見えない不安たるや。
さらに、イレギュラーとして現れた十六番目の妹の存在。
単純に増えるばかりではない、それでは一体どうなるのか。
先が読めない展開で、ぐいぐい読んでしまいました。
結末としては賛否を感じますが、これも「分裂を続けた妹」のひとつの形かと。
物語はある朝、中学生の妹「藍」が分裂したことから始まる。
自分でも何書いてるのかわけがわからないが、事実そうなのだから仕方ない。
妹は一晩ごとに倍に増え、主人公で兄の葵は妹の世話に奔走するのだけれど、十六番目の藍は、他の能天気妹とどうにも毛色が違うようだ、となったところから話が転がり始める。
以下ネタバレ有。
正直ナメてた。
タイトルや物語の導入から、よくあるラブコメ系の展開だと思っていた。
妹増えるってどうせ十六人とか三十二人くらいでストップだろ、あとはイチャイチャするんだろ、ほら幼馴染の女の子も出て来た!
なんて思っていた。
実際、途中まではその流れだったのだが。
妹の分裂は止まるどころか倍々ゲームで増え続け、
挙句の果てに人類との生存競争まで発展する始末。
これ、タイトル詐欺じゃね?
いやタイトル通りなんだけど、絶対狙って付てる。
中身はガチガチのSFです。
横浜駅SFに通じる何かを感じる。
あの作品が好きな人であれば、読んで決して損はないでしょう。