「読む悦び」を存分に味わえる

歌手でいうと、艶のある声質で声量があって、声域も広くて、
当然のごとくピッチが狂ったりもしない。
そういう歌い手が、十八番を歌っているかのような文章で綴られた、
とても魅力的な小品です。

※「小品」とは単にサイズの話であって、「大作」の対義語ではありません。

ふたりの女性が「ある種の対決」をする8000字弱の物語ですが、
その短いなかにも読む者の予想を裏切る仕掛け(のようなもの)がふんだんで
つまりは「読む悦び」を存分に味わえる――そんな作品です。

細かく書いてしまうとネタバレになるので避けますが、
ふたりの女性の造形と対比、過去の因縁、現在の状況、場面の構築と描写、
そういう隅々まで行き届いていて、そしてみずみずしい。
(それはもちろん作者の執筆へのこだわりでしょうけれど)

えー、つまり何が言いたいかというとですね、
「読んでいて楽しかった」ということです。
たった6行前に書いたことを思いっ切り重複してますが、
そこは見なかったことにしてください(笑)




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