淡々とした筆致で描く、「青春の生々しさ」

主人公の行人は15歳。
中学3年生男子らしい好奇心と、戸惑いと、
ある種の達観をまとって生きている。

女の子も気になる。
仲のいい子がいて、何かと気がかりな子がいて、
兄の彼女も魅力的。
そうなれば当然、性への興味は尽きない。

学校ではいじめがあり、
不登校の生徒もいて、街には暴走族がいる。

そんな環境のなか、
迷いながらも“成長”していく行人の姿がすがすがしく、
読む者の手を止めさせないフックも配置されていて、
納得できるエンディングも用意されています。

あくまで淡々としてクールな筆致。
そのことが、「青春の生々しさ」を
より色濃く浮き彫りにしているようにも感じます。

若干――ほんの小さなことですが、
わずかなほころびを感じる部分はあります。
が、作品の本質を揺るがすほどのものではなく、
本作が素晴らしい青春小説であることに変わりはありません。

お見事でした!



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