少年の夏を彩った出会いと別れ、人間関係の変化。赤裸々な独白が秀逸です

主人公は、行人という中学三年生の少年。
中学最後の夏。夏休みのすぐあと。
彼と登場人物たちとの間で、会話が交わされ、時にちょっとした夜歩きの冒険を経て、彼の物語が進んでいきます。

彼を取り巻く、不登校、いじめ、家庭内暴力、病気、性への興味――
それらはなにげない日常のひとコマとして、少年の目を通して淡々と進んだかと思うと、その時々で立ち止まっては少年の中で彼らしい思考を繰り返します。

少年の一人称による感情の吐露がとても巧く。
少年少女の間で交わされる会話はテンポよく、時にコミカルで。
グイグイと読者の目を惹きつけます。
少年の、まだ広くはない視野と幼さを残した心情に、気がつくとどっぷりとはまっていきます。
この筆力の高さ。
恋愛もの・現代ドラマを書かれている方にはかなり参考になると思います。

ラストでわかる、タイトルの意味がとても素敵でした。

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