概要
食人族――人間を喰らう者たち。
彼らは彼らと戦う者の手によって封印される。暗い、太陽のない世界に落とされた。
しかし封印は完全ではなかった。罪のない人間たちも巻き込み、封印してしまったのだ。
太陽のない封印の世界で、食人族と接触する者はいなかった。だがただひとり、彼らと仲良くなった人間がいた。そして子供が産まれ、その子供は食人族の町で暮らしていた。
その子供――ダンは大人になった今でも、人肉を食べない自分と、寂しさを感じない彼らとは何かがかみ合わず、戸惑っていた。だが、それでも彼らとは仲間だった。
ある日。いつものバーに、見たことのない青年と女性が現れる。
「私たちに光を返せ」
女性が青年に言葉を突きつけた。
そして巻き込まれていく。光を取り戻すその道へと。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!求め続けた光。それは、すぐそばにある希望でした!
食人族対人間という対立構造の描写から始まるストーリー。冒頭はなかなか残酷なシーンもありますが、読むべきポイントはまさにそのあとに展開される、登場人物たちの心理描写にあります。
ネタバレを防ぐために内密は伏せますが、冒頭のシーンからは想像つかないシリアスな話や、温かい話など、どれをとっても胸に響くエピソードが満載です。
作者さまは紹介にあります通り、ダークな作品を書かれますが、しかし、そこには見事なほど人間の感情の部分を浮き彫りにされ、読む人に感動だけではなく、感情としての訴えを仕掛けてこられます。
いくつか公開されている作品の中では、こちらの作品は最初に読むのに適しているかと思います。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!自分を犠牲にしてまで守りたかった大切な世界
最初にあらすじを読んだ時に、人間を喰らうことで生きる食人族
そして彼らと戦う人間たち、というような話を想像しましたが
全然違いました。
多種多様な種族が協和するために、自分を犠牲ににしてまで
太陽の光を消した男と、どうしても太陽の光を求める女
そんな二人の間で心を痛める種族ハーフの男
三つ巴の想いがぶつかり合う良質なファンタジードラマでした。
人がそれぞれ生きるためには、生きるための正義、
もしくは心の拠り所が必要です。
本作ではその正義がぶつかりあいながらも、最終的には
かれら全員の想いが一つに収束していきます。
全てがハッピーエンドでは無く、望むべき世界を創ろう
と自分を犠牲にした…続きを読む - ★★ Very Good!!交わることのない者達の物語
食人族という決して人間と相容れることのできない存在。そんな彼らを閉じ込めた世界。
独創的な世界観や設定、造語が相変わらずの持ち味だなぁと思いました。
闇の世界で生き、それぞれの想いを抱える者達。
世界の創造主たる青年の行為。食人族でありながらどこか陽気で憎めないドリーク。
この二人が象徴的に感じ、誰か一人が悪いわけではないという事実が、ストーリーに深みを与えていました。
悲劇とも喜劇ともとれない内容であり、読んだ人によって様々な感情が沸き立つ作品だろうと思いました。
自分は『異なる存在が同じ世界で生きるために、どうすべきか』というテーマの作品だと感じました。
ただそのための『異質』を『食…続きを読む