プロローグⅣ

「そう、かもな.......」


俺と緋菜は黙りこんでしまった、別にわざとではない。しかし白音の話になると

どうも俺も緋菜も夜明もいつものように話せなくなる。何か言葉を発しようとしても喉から先へ言葉が出ない。でもこのことは3年前に終わっているはずなのだ。

だが俺たち三人は過去の出来事のように振舞っていても心のどこかではまだ引きずっている、振り切れていない。きっと振り切れていないことも三人とも理解はしている。だからこそ何かが欲しかった。さゆりには感謝している停滞していた俺たちの気持ちも、さゆり自身も前へ進める。

この時の選択は間違っていなかったと思う。しかしこの選択は後に思わぬ方向へ動き出す。



そしてその静寂の間はすぐに終りを向かえた。再びベルの音が鳴る。

「悪い遅れた蒼人!」

 店内に入ってきたのは雰囲気は爽やかで顔もすらっとして、最近の若者という印象ではあるがチャラチャラした格好でもなく周りから見ても好印象な青年だった。

「いいよ。俺たちが来たのもついさっきだし」

彼はすぐに俺たちの席に来て俺の横へ腰をかけた。

そこで緋菜はオーダーを取りに来ていたことを忘れていたようですぐに注文を取った。

「えっと.....みんな何飲む??」

「俺カフェラテ」

「ホットココアお願いします!」

「カフェラテとホットココアね、夜明は?」

「じゃあブレンドのブラック、ホットで」

「りょーかい」


数分後注文した飲み物が各々に行き渡ったところで俺はみんなに話しかけた。

「今日俺が話すことは3年前のことについてだ」

緋菜、夜明は驚いていた、よもやこの話をするとは思っていなかったのだろう。

しかし二人共すぐに覚悟を決めたのか頷いた。

「それにあたってまず聞いてもらいたいことがある。さゆりは3年前の関係者ということ。だが詳しくは知らない。そうだよなさゆり?」

「はい先輩。」

「そこで俺は関係者であるのに何も知らないのは不憫だと判断し、話すことについていちおうみんなに是非を問おうと思って」

「私は話すべきだと思ってる」

「夜明はどうだ?」

「話すこと自体には別に問題はないけど、さゆりちゃんはどうして知っているのかが気になっているかな?」

なぜ知っているのか。それは俺も気になっていた。だがさゆり自身が話したくなさそうであったので、触れないでいたがあながちさゆりは黙り込んでしまった。

「ごめん、言いたくなければ別にいいんだ」

「あとで...あとで必ず理由は話しますから」

「うんわかった。無理に強要しちゃってごめんね」

「いえ。先輩たちだけ話して私だけ話さないのは卑怯ですし、何より私自身も前へ進めません」

さゆり自身も感じていた。前へ進めないもどかしさ、過去にひっぱられたままでは嫌だという気持ちが。そのことが知れて俺は安心した。これならどんな結末でも受け入れられるであろうと。

俺は立ち上がって、喫茶店アリスの店主 はるかさんに話しかけた。

「遥さん、緋菜借ります」

「蒼人。過去にケリをつけてこい」

「はい。」

遥さんは笑っていた。まるで安心して子供の成長を見届ける親のように。


そして俺は再び話し始める。

「始まりは今から9年前になる」

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