出会いⅡ

「あれが、浅葱白音か...」

「え?蒼人見るの初めてなの??といっても私も見るのは三回目なんだけどさ」

「まあ見たことのないのも無理もない、出席日数は単位をぎりぎり落とさない程度で来ているさぼり常習犯。しかしその一方で、成績優秀、その見た目はまさに大和撫子やまとなでしこ。まぁ不思議系美少女って感じか」


「学校に来たくないのかな??」

「そういえば何か噂みたいなのなかったけ??」

「あーあれか、誰とも喋らない、笑ったところを誰も見たことない。

無言無感情むごんむかんじょう冷徹姫れいてつひめ〉っていうやつ?」

「あ、聞いたことあったわその噂のこと。浅葱白音のことだったのか」


すると緋菜が自分の腕時計を見て慌てて二人に向けて言った。


「早く行かないといつもより早く家を出た意味ないじゃん!

二人だってあの人込みが嫌だから今日早く来たんじゃないの?」

「やばい!すっかり忘れてた!緋菜サンキュー」

「クラス替えの発表は混むから嫌なんだよなぁ」


俺たちは急いで学校へ向かった。

その時、少女は一人の男子生徒を目で追っていた。

彼女は心の中でどこかに似ている気がしていた。




俺たちは学校に着くなり昇降口しょうこうぐちに向かった。案の定、人はそう多く来てはおらず、すんなりと新しいクラスを確認することができた。

しかし、そのあと俺は自分のクラスの出席番号1番を見ていた。

ただ俺は嬉しさのあまり呆然と立ち尽くしていた。

すると夜明が話しかけてきたが、反応に少し遅れてしまった。


「俺たちまた同じクラスだな!!・・・・どうした?俺たちは運がいいってことか??」

「そ、そうだな!!ラッキーだな俺ら!」


夜明はため息をつき会話を続けた。


「悪いことは言わない。浅葱白音はやめとけ」

「それはどうゆう意味?彼女が冷徹な姫だからか?」

「いや。普通に考えてだよ。何で誰とも喋らない、一回も笑わないんだよ。本当に人間かよ」

「夜明、流石に言い過ぎだ。彼女には彼女なりの理由があるんじゃないのか?」

「そうだな、言い過ぎた。いままで関わりなかったから何も知らないのに」

「いいじゃねぇかこれから関わっていけばさ。同じクラスなんだし」

「そうだな。とりあえずまた一年間よろしくな蒼人!」

「おう!よろしくな!」


すると一人だけクラスが別になった緋菜が不機嫌そうにしていた。


「なんで私だけE組で二人はB組なのよ!」

俺はすぐにフォローを入れる。

「まあいいじゃねか俺たちばっかりじゃなくて他にも友達つくればさ」

「まだ違うクラスは百歩譲っていいとしても、なんでE組は旧校舎なの!!」

「それはその・・・E組が一番最後のクラスで、新校舎に入りきらなかったからかな.....??」


緋菜はムスーっと顔を膨らませた。


「まぁ落ち着いて、今日帰り早いから帰りにカラオケでもいこうぜ」


夜明ナイス。俺は心底思った。

なぜなら、緋菜は大抵のことがない限りカラオケの誘いを断らないほどの大のカラオケ好きであるからだ。

その効果は覿面てきめんですぐに緋菜は嬉しそうにして、誘いにのった。

そして各自の教室へと向かう。


「緋菜じゃあ、あとでなー!」

「またあとでねー!」




授業が終わった後俺らはすぐに駅前のカラオケ店に行き、かれこれ俺らは5時間も歌い続けた。


「緋菜はやっぱり歌上手いな!点数勝負しても勝てる気がしない」

「ありがと!でも、もうちょっといい点数取れた気がするんだけどなぁー」

「あれで本領じゃねぇのかよ、お前凄いな」

「褒めすぎだよ夜明ー!」


あながち緋菜は嬉しそうだった。


しかし三人で並んで他愛もない会話をしているときだった。

突然俺の見ている景色が静止した。

広場の噴水の水は噴き上げられたまま空中に静止し、すれ違う人々の声も途絶え、時計の秒針も動かない。

この場でただ俺一人だけがこの静止下で行動できている。

どうして俺以外が静止しているのか理解できなかった。

いや、正確には考えている間もなく元に戻ったのだ。

その秒数わずか10秒。その間に、俺が進んだ距離は5歩。

しかし10秒とはいえこの事態をほっといておけるわけがない。

時が止まる前と変わらない会話をしている二人に振り向いて話しかけた。



「二人ともこの後時間あるか?」


「あるけど」

「俺もあるけど急にどうした?そんな強張こわばった顔して」


なぜこんなことになっているのか彼女なら知っているかもしれない。

そして、以前にも俺を助けてくれたように今回も。


に会いに行く」

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