出会いⅢ
時の停止が起きてから30分後
俺たちは魔女の棲む館・・・ではなく喫茶店に到着した。
俺たちは店に入るとそこには大人びた雰囲気の女性が立っていた。
彼女は誰かと話していたが、すぐに俺たちが入ってきたことに気付き、
すぐに会話を止めて、こちらの方へ来て出迎えてくれた。
「いらっしゃい。久しぶりね蒼人。今回はお友達も連れてきたの?」
「お久しぶりです遥さん。」
「初めまして各務原緋菜です!」
「初めまして奏多夜明と言います」
俺たち三人は順番に挨拶をしていった。
魔女こと
俺は以前ある事件に巻き込まれた際に遥さんに助けてもらい俺が信頼を置く一人であり、怪奇にも詳しい人である。
そして遥さんは本題となるものを問いかけてきた。
「で?蒼人何が起こった?話してみなさい」
「はい。二人も聞いていてくれ」
二人は息を呑んで頷いた。
すると先ほど遥さんと話していた人がこちらへ近づいてきた。
先ほどは物陰に隠れていて気付かなかったが、それは意外な人物であった。
「白音ちゃんも興味あるのか?」
その美しい少女は遥さんの問いにこくりと頷いた。
俺たち五人は一つのテーブル席に座った。
席に座るなり浅葱白音は携帯電話を取り出し文字を打ち出した。
〈何があったのかしら?〉
彼女は画面を見せてきた。喋らないではなく喋れないのではないのか。病気での障害、事故での障害などいずれかの理由で言葉を発することができなくなったのであろう。だが俺はこの事について言及しなかった。自分自身、過去の記憶がないことを言及されるのは気持ちが進まないこともあり、他人の過去にはなるべく干渉しないようにしてきた。今回も例外ではない。そして緋菜も夜明もそのことに言及しなかった。
そして俺は覚悟を決めて言葉を発した。
「時が止まったんだ。俺以外のすべてが。」
『え?』
緋菜と夜明は驚いている。むしろ普通の反応であるだが、残りの二人は驚くことなく真剣な表情で、考え始めた。
すると一人が文字を打ち込み始めた。
〈どのくらい時間は静止していたの?〉
「10秒くらいかな。何か思い当たることある?」
〈申し訳ないけど何も当てはないわ。ただ一つ疑問があるのだけど〉
「俺が答えられそうなことだったら何でも答えるよ浅葱さん」
〈白音でいいわ。それで疑問というのは....本当に止まっていたのはあなただけかしら?〉
俺は30分前を思い返していた。あの時は分からなかったが今ならわかることがあるかもしれないと。しかし思い返しても自分以外が止まっているという認識しかなかった。
「少なくともわずか10秒では俺以外は止まっていた」
〈そう〉
少女は打ち込みを止めてしまった。初めて彼女と会話を交わした印象として噂通りだった。表情どころか、文面からも感情が篭ってない。過去に何があったのだろうか気になってしまった。俺らしくもないことを考えた。
すると遥さんが会話を続けた。
「いろいろ気になることがあるな。」
「何か思い当たることがあるんですか?」
「いや、ない。だが情報は必要だ。さっき白音ちゃんが言ったように他に静止下で動けるものがいるかどうか、範囲はどのくらいか、頻度はどのくらいか......など知りたい事は山ほどある。だからまた時間の静止が起こったらここに来い。私たちができる限り協力する。」
「ぜひお願いします。」
するとさっきまで驚いていて状況も掴めなかった二人も覚悟を決めたみたいだった。
「俺たちも協力する。なにが起こったかは正直今でも信じられないけど、困った時に助け合うのが友達だから」
「私たちだけ蚊帳の外は嫌だもんね!」
すると先ほど黙り込んでしまった少女も再び文字を打ち込み始めた。
〈私も協力するわ〉
素っ気ない
「みんなありがとう。何かわかったら連絡をしてくれ。そうだ白音、メールアドレス交換しないか?そのほうが情報共有するのに便利なんだけど・・・・どう?」
〈いいわよ。ついでに緋菜と夜明も交換しましょ〉
すると二人は名前を呼んでもらえたことが嬉しかったのかすぐに返答した。
「よろしく!白音ちゃん!」
「よろしくね!しーら!!」
〈しーらという呼び方はどうなのかしら〉
「まあ、こういう奴らだから気にしないでくれ」
遥さんも笑っていた。その後、雑談を30分ぐらい話して俺たち3人は店を後にした。
俺たちの最寄り駅は全員同じなので、いつもの下校と同じように話していた。
「白音ちゃん、ぜんぜん思っていた印象とは違ったなぁ」
「だろ?人を見かけで判断するのはどうかと思うぞ?夜明」
「以後気を付けるようにするよ。でも無言無感情は本当だったな」
「そうそう!でも何か好きでやってる感じじゃなくてそうなってしまったっていう感じがする」
「きっと過去に何かあったんだろうな。」
「きっとつらい何かだろうね.....」
「ならさ、私たちが感情とか取り戻せるようにしようよ!一緒に遊んだりすればいつかはきっとね.....!」
「そうだな時間はたっぷりある。まだ俺たちは16歳だし」
この時はあの時間の停止のことなんてすっかり忘れていた。
この1秒1秒、時間は経過していく。
あの少女との出会いは俺たちの時間の感覚を歪めていった。
出会い編(終)
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