2016年 伝承

伝承Ⅰ

2016年4月10日


月曜日に行われた始業式から4日経った5日目の金曜日。

1限はLHR(ロングホームルーム)なので、について決めるのだろうと思っていた。

学級委員の二人が前に立って話始めた。その内容は予想通りで、終桜祭しゅうおうさいの出し物についてだった。

毎年うちの学校では地域の方々と協力して、大きな通りを歩行者天国にして、その通りで出店をやったり、展示をしたりする。

しかしそれは、弥生学園を含める北側の方針であり、南、東、西で異なった方法を執る。つまり四方位で区分けされ、それぞれの運営をしている。

これでは一見、終桜祭という名目を掲げた独立した集団が各々の地域で祭りを行っているように見えるが実際はそうではなく、祭りは一週間行われるので、日にちごとに行く地域を変えたりすることもできる。

その結果、各地域は、他地域に負けないように集客に努めるので、全国的にもレベルの高い祭りになっている。

また学校も祭りの期間中は、授業が午前中のみのため生徒たちにも嬉しい

ものなのである。

一週間も祭りをするため準備は早めから取り組まなくてはいけない。

そして、無駄に過ごせる時間は限られているのだ。

だから本当は時間の静止について詳しく調べる時間を作れるかさえ怪しい。


委員長たちが本題を話し始めた。

「誰か企画案はありますか??」


誰も企画案を出す者はおらず、そのまま15分が経過した。

周りの人達は周囲の人たちで話し合っており、現に俺と夜明けもそうやって話し合っていた。

すると、隣の席の白音から丸まった紙が投げ込まれた。

彼女はジェスチャーで、「開いて見て」としていたので俺たちは中身を見ると、そこには企画案が明確に記載されていた。

彼女は俺にこの案を発言しろと言わんばかりだったので俺はしょうがないと思い、渋々発言した。


「えっと・・和風カフェなんてどうですかね??和風カフェなら普通のカフェとは被らないし、外でも多少はやりやすいかと」


俺は白音の企画案通りに読み上げた。

周りのから賛成の声が多く上がった。低迷ていめいしていた出し物もこれでなんとかなりそうだ。


「ありがとうな白音」

「助かったよ白音ちゃん」


白音は軽く頷いた。彼女もあのままでは不味いと思ったのだろう。

本当はものすごく面倒見がいいのでは?そんなことを思った。

今回の出し物や時間の静止についてもすぐに協力してくれた、改めてなぜあんな不名誉ふめいよなあだ名が付いたのかさえ分からない。

最近は彼女のことばかり考えている気がする。

気付くといつの間にか役割分担の話になっていた。


「如月くんには、買い出しに行ってもらいたいのだけどいいかな??」

「あ....ああ」

とっさのことだったので、適当に返事をしてしまって晴れて買い出し担当になってしまった。これには流石に失敗したと落ち込む。

立案者として資材調査してほしいという意図なのだろうが、これは面倒くさい。だが承諾をしてしまった以上投げ出すわけにはいかない。

そう考えていると、夜明が委員長に話しかけた。


「その買い出しに俺と白音ちゃんも付いて行っていい??」

委員長は嬉しそうにその提案を承諾した。そして委員長以外の生徒たちはみんな驚いていた。たぶん白音のことだろう。学校をさぼり続けたそんな彼女が行事に参加しようとしているのだ。


そして当の本人は周りの事など気にせずノートに文字を書き込み、俺に見せてきた。


〈元々私が提案したものだから私も手伝うわ。それと、代弁してくれてありがとう〉


このノートの最後の一言にに俺はつい顔が赤くなってしまった。


〈どうしたの?顔赤いわよ?熱でもあるのかしら?〉


彼女は席を立ち俺の目線の位置までかがみこんだ。


「いや、大丈夫だよ」

俺は慌てて椅子を引いて顔を白音から離す。


〈そう?〉

彼女は不満そうに席に戻った。

夜明は終始ニヤニヤしながらこちらを見ていた。


「じゃあ企画案、生徒会に通してくるね」

委員長のその言葉とともにチャイムが鳴った。




放課後俺たちは近くのホームセンターに来ており、何か使えそうなものをリストアップし、委員長にメールで送りすぐに使うものだけを購入した。


「白音。それ重いから俺が持つよ。あとその荷物は夜明に持たせればいい」


彼女は無言で荷物を渡してきた。

そしてホームセンターから出ようとしたまさにその時だった。

まただこの感じ。駐車場で動いていた車は静止し、買い物に来ていた親子は子供をおんぶしたまま止まっている。


「くそっ!また俺だけなのかよ!」


すると後ろから背中をツンツンしている感触があった。驚いて後ろを振り返るとそこには、俺と同じくこの静止下で動ける人間がいた。

「白音・・・・お前は動けるのか?」


彼女はこくりと頷き、ポケットから携帯を取り出し文字を打ち込んだ。


〈今は何か原因となるものを探すのよ〉


一周見渡しても何も変化はなかった。そして俺は一つ思いついた。


「遥さんに電話をしてみて、ほかの場所も時間が止まっているか確認しよう」


〈試してみて頂戴。いつ時間が戻るかわからないからなるべく早くね〉


俺は遥さんに電話を掛け、繋がったその時。時間の静止は終わってしまった。だが今回は収穫があっただけでも幸いだと思わなくては。

にも動ける人間が居たのだから。


「どうした蒼人?一旦落ち着け」

「すみません遥さん。でもその・・・」


俺が言おうとしてたはずの言葉を遥さんは先に口にした。

か?」

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