伝承Ⅱ

その言葉はすべてを見透かしているような怖さが見え隠れした。心の中の焦りさえも見透かすような。


「遥さん、まさかそっちも時間が止まったんですか?」

「そうだ。今からこっちに来れるか?」

「すみません。今は、緋菜いないんで、明日ならいけると思います」

「わかった待っている」



俺は失礼しますと最後に一言言って電話を切った。

改めて柳瀬遥という人物の一端を再認識した。相手の心情を読むのに長けているというか、人間というものをよく観察している。故に魔女と呼ばれる理由の一つなのだが。


そしてふと思った。明日は元々三人で遊ぶ予定だったので、俺たちは集まることはできるが、白音の考慮していなかった。


「勝手に決めちゃったけど明日で大丈夫だったか?」

〈問題ないわ。いつも休みの日は読書しているぐらいだもの〉


彼女には遊ぶ友人もいないのだろう。ならば、俺たちが彼女と一緒に遊んだりすることが彼女にとっての何かプラスになればいいなと先日考えていたことを早くも実行に移す機会が来たのではないだろうか?

後で二人に相談しよう。そう考えていると白音が携帯電話の画面を見せてきた。


〈どうしたの?顔が二ヤついているわよ。何か面白いことでもあったのかしら?〉


「いや。別にー。」

「なんか隠したな蒼人」


急に夜明の声がして俺はすっかり時間が戻っていることを忘れていた。

俺はこれ以上言及されると困るので話を変えた。


「早く帰るぞ委員長たちが待ってる」


「あっ、話変えやがった」


俺たちは急いで学校に戻った。




次の日俺たちは喫茶店に11時に現地集合にしたが、俺が着いた時には既に全員揃っていた。


早速俺は昨日の出来事について話し始めた。


「一応前もって伝えたはずだから分かっているとは思うけど、昨日また時間が静止した」


全員頷いた。その表情は話始める前とは全く変わって真剣な表情をしている。

さすがに二回目となると驚きはしないものの、夢や勘違いで終わらせることはできなくなった。


「そして俺以外にも動ける人はいた。」


「誰なの??」


この場で知らないのは緋菜だけである。夜明はあの後帰り道で話したからである。しかし彼も聞いたときは驚いていた。


「白音と遥さんだ」


緋菜は驚いてすぐに言葉を返すことができなかったが、状況を理解したらしく話を続けてと言った。


「聞きたいことがあるんだけどいいか?白音」


〈いいわよ。何かしら?〉


「前回、月曜日に時間が止まった時何処にいて何をしていた?」


〈ここにいたわ。それはあなたたちもわかるでしょ?何をしていたかと言われると遥と話していたわ。でもあの時は店内に他のお客さんもいなかったし変化に気づかなかったわ〉


「ということは前回は遥さんも気づかなかったんですね」


「あぁそうだ。だが今回は店内のお客さんの会話が途絶えたからすぐにわかった。そうだな・・時間の停止は60秒ぐらいか?」


「そうですね。俺もそれぐらいだった気がします。他に何か得られることはないんですかね?」


その時、緋菜がボソッと呟いた。


「静止下で動ける三人には何か共通点でもあるんですかね??」


俺には三人での共通点が思いつかなかった。ふと横に座っている白音を見ていたが何も思いついていない様子だった。

しかし一人の女性は一瞬だけくすりと笑っていた。しかし他の人は遥さんが笑っていたのを見ていなかった。何か思いついたのかと思い遥さんに聞いてみた。


「遥さん、何か分かりましたか?」


「いや、残念ながら期待に沿うようなことは思い当たらなかった」


これ以上意見も出なさそうだったので、俺はこれ以上話を進めなかった。

すると、自然と解散する雰囲気になった。


「今日はここまでにしよう。遥さんまた何か分かったら連絡お願いします」


「分かった。そっちも蒼人何か分かったら連絡をくれ」


「分かりました」


そして俺たち4人は店を後にした。


店を出るなり俺は白音に話しかけた。


「白音この後暇か?」


〈まあ。家に帰って読みかけの本の続きを読むぐらいかしら?〉


俺は白音に遊びに誘おうとしたが、この後の話す言葉が見つからなかった。

すると二人がフォローを入れてくれた。


「しーら、今から遊びにいかない?」


「いこうぜ白音ちゃん」


俺は二人のこういう一面によく助けられるので、いつも感謝している。

その後三人は駅の方へ歩き出した。


〈いいけど?何するの?〉


その後三人で何処へ行くかなど会話で盛り上がっていた。

俺はその三人の後ろ姿を見て何処となくほっとした。

俺一人では無理かもしれないが、あの二人もいれば白音のことは何とかできるかもしれないと。


「ほらー蒼人も行くよ!早く早く!!」


俺はおうと返事を返し三人の元へ向かった。




魔女こと柳瀬遥は4人が出て行ったあと、考えていた。

あの時間の静止の正体、原因等々。そして何かひらめき、独り言を呟いた。


「白音ちゃんごめんね、少なくともこの時間の静止の正体はわかった。

だけど、君との約束があるから、教えることはできなさそうだ。

でも思うこれは私が関わるべき問題じゃない。としても。君たち2人で解決するべき問題だ。」


遥はそっと目蓋まぶたを閉じて、昔のことを思い返していた。

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