第23話 再会
上京して2年、俳優になりたい、そんな夢はアッという間に敗れて、僕は地元へ帰ってきた。
高校の先輩が店長を務めるホームセンターに就職して1年が過ぎた夏。
「田村、今日早退だったな」
「はい、…忙しい時にすいません」
「いや構わないけど…珍しいなと思ってな」
「あぁ…あの…アイツの命日で、友達と一緒に墓参りでもと思って…帰ってきたわけだし…」
「あぁ…そうか…そんなことあったな…」
僕が高校に入って『藤岡』という同級生と遊ぶことが多くなった。
夏休み…僕らはバイクで日帰りのツーリングに出かけた。
そして…彼は…。
「そうか…うん…」
「じゃあ、すいません…車にツレを待たせてるんで」
僕は助手席で待っている友人と一緒に事故を起こした山へ向かった。
……
「地元に戻って思い出したんだろうな」
「店長が3年の頃ですか?」
「あぁ、同じ部活でな、藤岡の事も覚えているよ」
……
「あれから5年か~」
「そうだな」
僕は友人と当時の思い出話をしながら花を買って現場へ向かっていた。
「田村、東京はどうだったんだ?」
「あぁ…バイトばっかりで…俳優どころか劇団の面接すら受からなかったよ…ホント…生活するだけで精一杯だった」
「そうか…俺は…オマエと違って何にも変わらなかったな…これからもそうなんだろうな」
「そんなことないさ、彼女とか作ってさ結婚して…そんな普通の暮らしが一番いいんだろうなって思うよ」
「……そうか…普通か…難しいかもな俺は…」
「そんなこと言うなよ、しかし卒業居してから3年…オマエは変わってないな…藤岡」
「そりゃ…そうだろうな…田村、もうすぐだな事故現場」
「あぁ…アレ? ブレーキが…えっ‼ 効かない‼」
「………待ってたんだぜ…これからも、ずっと一緒だ田村…」
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