第11話 恵まれし環境

産まれつきに恵まれた環境に育つ、そんな羨ましいヤツ。

僕は勝ち組というやつだ。

栄養価の高い食事、1日に何回も出てくる。

もう食べれないよ、という日もあるくらいだ。

まったく動かなくてもいい生活。

食べるか寝るか、この2択だ。

今日も美味しい食事を腹いっぱい食べた。

ぐっすり眠った。

起きてまた食事。

この世の中には、不幸なヤツもいる。

僕の部屋の窓から見える外には、そんなヤツがいっぱいいる。

彼らは、朝から晩まで走り回って、地面に落ちた残飯を食べている。

気持ち悪い。

あんな生活、死んでも嫌だ。

貧富の差って残酷だ。

壁に仕切られた、アチラとコチラで、こんなにも生活が違う。

僕は幸せだ。


今日は、壁の外へ出た。

車に揺られて、お出かけだ。

どこに行くんだろう。

楽しみだな~。


「シェフ、このフォアグラ最高だね」

「はい、ムッシュ、今日仕入れたばかりのガチョウです」

「しかし可哀想だね、肝臓を大きくさせるために運動させずに太らせるんだろ」

「いやいや、ムッシュ、もともと栄養を溜めこむ性質らしいのです。幸せですよ、ぬくぬくと大切に育てられるのですから」

「そうかね、あ~ウェイター!外のみすぼらしい子供を窓に近づけさせないでくれ!景色が台無しだよ!」

高級レストランの窓の外には、物乞いの少年が客に小銭をねだる。

「かしこまりました、すぐどけてきます」


太った中年が美味そうにフォアグラを口に運ぶ。

「まぁ、あんな生活しなければならない家庭に産まれなくて良かったよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る