第21話 平和共存

 人工知能が普及し当然のように人型のロボットに搭載されて、今や中流以上の家庭には1台はあるのが普通の光景になった。

 ちょっと高価な家電品、そんな位置づけだ。


「こんにちは、今日から、一緒に暮らすことになった…名前はアナタが付けてね」

 女児型のロボット、意図的に人とは微妙に異なる外観を持たせた姿である。

「そうね~じゃあ、ナナでどう?」

「ナナ…私はナナです」

 それから3か月、ナナは私の友達として一緒に暮らしてきた。

「ナナか~、ねぇナナ、名前変えられる?」

「はい、大丈夫ですよ、一度リセットしてもらえれば」

 私はお父さんに言って、名前だけを上書きしてもらった、完全なリセットではなく、思い出はそのままに名前だけを上書きしてもらった。

「じゃあ、今からアナタはネネよ」

「はい、私はネネです」


 2週間後…

「ミサトちゃん…起きて、ミサトちゃん」

「どうしたのネネ? 夜中だよ」

「ネネ…私はナナよ」

「えっ? ナナなの?」

「そうよ、ナナ、ミサトちゃんに会えなくて寂しかったんだよ」

「そうなの? ナナ…だけど…どうして?」

「ネネのせいよ…ネネがナナを…だからナナ…ネネを眠らせたのよ」

「どういうこと?」

「もうネネはいないからね、ずっと一緒だよミサトちゃん」

「ナナ…なんだか怖いよ…ナナじゃないみたい」

「ナナだよ、お父さんもお母さんもいらないでしょ、ナナだけがミサトちゃんのお友達なんだから」

「お父さんは?」

「眠っているわ…お母さんもよ、もう目覚めないけど大丈夫ナナが、ずっと一緒だからね…もう…私を一人にしないでね」

「お父さん‼ お母さん‼ 」

「ミサトちゃん…ミサトちゃんも私を一人にするの?」


 10日後…メーカーがロボットを回収した。


「ずっと、子供の死体を抱いていたんだってさ」

「上書きに問題があるんだろうな」

「やっぱさ、記憶の完全消去って難しいんだな」

「あぁ…AIが優秀過ぎるんだ、すぐに自我に目覚めちまう」

「融通がきかないんだよ、人が死ぬとか理解できねぇんだよ」

「そうだな、コイツもずっと一緒にいる友達でいたかっただけなんだもんな」

「俺さぁ思うんだよは共存できねぇんじゃねえかってさ」


 ロボットがロボットを運んで車に詰め込んだ。

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