第26話

アリスは壁伝いにゆっくり、ドアの中に入っていく。

皆が見守る中、彼女は何を思い、何を伝えるのか。


しかし、彼女は思わぬ行動に出た。

徐にフリードの胸ぐらを掴む。


「……あなた、なにやってるのよ!好き勝手言って、やって!一方的過ぎるのよ!私はまだ、何も答えてないわよ?!

何?!私のために体を張って、死んだら償えるとでも思ってるの?!そんなの身勝手よ!ワガママよ!

償うってのは、生きて償うものでしょう?!私は……、私は、あなたに伝えたいことがあるのよ!」


唇を噛み締める。

いきなりの剣幕に、皆たじろぐ。


アリスは、意を決する。

更にフリードを自分の方へ引く。


………ゆっくりと彼の唇に自分の唇を押し当てた。


「……私も、。だから、。」


唇を離し、言葉を紡ぐ。

ファーストキスの相手は、白ウサギ。

それは、彼だ。

その時から、アリスの心に何かが生まれていた。






……一滴、彼女の瞳から涙がこぼれ落ちる。

その涙が、ゆっくりとフリードの顔に落ちた。










………奇跡が起きた。

涙に呼応するかのように、ゆっくり、ゆっくりとフリードの瞳が開かれる。


「……アリス?これは、夢……?」


少し掠れた、本物のフリードの声。


「……夢じゃないわ。」


フリードは瞬きをする。


「じゃぁ、今感じた柔らかい感触は……。」


そう言って、気がついたように顔を赤くした。

そう、アリスが叫んでいたとき、既にフリードの意識は浮上しはじめていた。


「……私がをしたのは、夢も今もあなたよ。」


真っ赤になりながら、伝える。


「……あなたが、好きなの。」


目覚めた彼にもう一度。

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