第6話

アリスは脇目もふらず、ただただ走った。

いつのまにか涙が零れていた。

自分でもわからなかった。

『可愛い』や『好き』。

そんな言葉なんて異性に言われたことなどなかった。

ただただ戸惑いで混乱していた。





気がつくと、眩しい光と共にひらけた場所に出た。

そこでは暢気にお茶会が開かれていた。



「……どうしたの?可愛い顔が涙でぐしゃぐしゃだよ?それでも可愛いけど。」



頭の上から甘い声が聞こえ、思わず顔をあげる。



「……また、耳。」



三月ウサギが優しい顔でアリスを見つめていた。(うぐぐ。)



「んー?時計ウサギとチェシャネコにあったのか。災難だったね。」



更に目を細めてアリスを見つめる。(やめろぉ。)



「……俺なら順序考えるんだけどな。女の子の扱いを知らない子どもは困るね。」



そういうと、アリスの頭を優しく撫で始める。

アリスは言葉と裏腹に優しい行動に戸惑った。



「…何してやがる。茶が冷めるだろうが。おい、小娘。おまえも飲んでけ。

眠りネズミ!」



帽子屋がぶっきらぼうに誘い、眠りネズミに促す。



「いいよぉ……。お姉ちゃんもー飲んでいきなよぉ…。zzz」


「寝るんじゃねぇよ!さっさと淹れろよ。」



眠りネズミはのろのろ起きると、ゆっくりお茶を淹れ始める。



「帽子屋の旦那ぁ。女の子には優しくしようよ。泣いてるんだしさぁ。」


「小娘にゃ変わりねぇだろうが。」



顔も見ずにいい放つ。(こいつ…。)



「そんなんじゃモテないよー?」


「う、うるせぇよ!黙ってろ!イカレウサギが!」



そういわれても三月ウサギはニコニコ顔をしていた。

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