第7話

「……なんで?なんで笑っていられるの?」



酷いことを言われていると思っていた。

なのに彼は笑っていた。

アリスにはそれが理解できないでいた。



「優しいんだね、アリス♪俺、優しい子って好きだな。」


「……おまえは黙ってろ。小娘にゃわかんねぇだろうよ。子どもだからな。嫌みの意味すらわかんねぇんだろ。」


「こ、子どもじゃありません!」


「今の、本気でバカにしてたとでも思ってたんじゃねぇのか?そういうことだろ?」



アリスはなにも言えなかった。

帽子屋の言う通りだった。

『嫌み』と『冗談』。

アリスには経験のないことだった。



「……そんなの知らない。知らない。」


「……ふぅ、あのな?人間ってのは言葉のやり取りして成長するんだ。おまえはちゃんと会話してるのか?会話もろくにしてねぇなら、覚えられることも覚えられねぇだろうよ。」


「会話……。」



アリスはメアリーアンを思い出す。

彼女は頻りに話しかけてくれていた。

しかし、アリスはどうだろう。

彼女すら信じられず、生返事ばかりだった。

……会話とは到底言えないもの。



「……私は聞くこと、知ることが怖かった……の?」


「知らねぇよ。知りたきゃ聞け。わからないことを分からないままにままにする方がもやもやするだろうが。」


「なんだかんだ言って、旦那心配してんでしょ?」


「し、心配なんかしてねぇよ!(…聞けねぇときもあるわな。信用できる相手見つけな。まずは、自分から歩み寄るんだ。怖くても踏み出せ。でないと変われない。変わることを恐れるな。」


「そうだよね。最初は自分を知ろうよ、アリス。逃げてたら何も始まらないからさ、ね?」



今まで人の言葉など聞きもしなかったアリス。

それだけに、彼らの言葉は温かった。

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