第5話

「……お姉ちゃん!猫、お姉ちゃんから離れろよ!」



引き離そうと手を出した瞬間、チェシャネコはひらりと木上に舞い戻る。(ふぅ…。)



「……ちぇ!やーっぱ来ちゃったか。ざーんねん。おまえだって、キスしたくせに……。」


「?!い、いいでしょ!」


アリスは二人のやり取りに唖然として何も言えないでいた。



「……ボクはアリスが好きだよ。ボクだけにものにしたい。」


「僕だって好きだよ!猫なんかに渡すもんか!」



アリスは全く状況が読めないでいた。



「……ごめんね、アリス。いきなりキスしちゃって。猫は僕が何とかしておくから逃げて!」


「なにいってるの?!アリスはここにいるんだよ!勝手なこと言わないでくれる?!ねぇ、アリス?他のヤツのとこなんかに行かないでよ…。」



アリスは戸惑っていた。

こんな状況は初めて。知るはずがない。訳がわからず、立ち尽くすしかなかった。



「わ、私はどうしたら、いいの?わからない…知らない…なんなの?好き?好きって何よ?!

そんな言葉…そんな言葉…信じない。信じないんだから!」



アリスはパニックを起こしていた。

聞き慣れた言葉。メアリーアンがいつも言っていたから。

アリスは知っていた。けれど、理解したくなかった。

嘘だと…… 、嘘だと思わなければたってもいられないくらいだった。

理解することが怖かった。

自分が自分でいられなくなりそうで……。

アリスは絶句する二人をその場に残し、また宛もなく走り出した。

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