第16話

「……!行かないで!」



切羽詰まったチェシャネコがアリスにしがみついていた。

その姿にアリスは戸惑いを隠せない。

なにかが重なる。……この子を知っている?そんなはずは……。



!ひどい……。赦さない!アイツら!」



アリスの記憶が揺れ動く。

この子は私が知っている子なの?と。



「……やめろ!これ以上関わったら大変なことになる!」


「……おまえはいいよな!アリスと……!」


「それ以上言うな!……ボクももう無理だよ。お願いだから戻ってよ!チェシャネコ……。」


「……何のこと?」



今にも泣きそうなチェシャネコが辛そうに、本当に辛そうに戻っていく。






「……アリス、そろそろ思い出さないといけない。これ以上、ここにいてもいけない。」


「……どういうこと?」


「ボクが誰なのか、知ったら君は驚くよ。でも、償いたかった。君はね?ある人の私念によって酷く人間不信になったんだ。」


「……ある人の私念?」



時計ウサギは、少しずつ姿が変わっていく。



「あなたは……!」



そう、僕こそが時計ウサギ。

君の道標ピエロ。そろそろ、元に戻ろうか。



「あ……!」


見覚えのある少年の姿に変わる。


「……思い出した?お願い、アリス。怯えないで話を聞いて。あの世界に行った君なら、今なら話を聞いてくれる状態であると思ったんだ。」


「あ……あ……。」


「完璧ではないだろうけど、落ち着いて聞いてくれ。あのときの真相を。

君には生きてほしいんだ。……ずっと好きだったから。」

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