第12話

優しそうな面立ちの彼。

わからないだろうが、実はあの赤のクイーンの夫のキング。

……庭師にしか見えないが。



「だめだよ?アリスを困らせちゃ。ごめんね?困らせて。」



手拭いで顔を拭うと整った顔立ち。(くぅ…。)



「酷いわ!あたしはアリスとお話がしたいだけよ!」


「とめないでよ!」


「はいはい。君たちの気持ちはわかるよ。

僕も話したかったし……、会いたいと思っていたんだ。あえて嬉しいよ。アリス。」



優しい優しい笑顔。



「いやぁ、もうちょっと小綺麗にしてくるんだったなぁ。可愛いアリスに見苦しい姿を見せてしまったね。あー、趣味が庭の手入れでね。」



いっそ庭師にでもなればいいのではなかろうか。



「この子達にも愛情を注がないとね。」


妖精たちを優しく見つめる。



「当たり前よ!」


「アリスには一番きれいな姿で会いたいからね。」


「欠かしたりなんかしたら許さないわ!」


「わかっているよ。だから、毎日来てるじゃないか。」


「奥様の目を盗んでね。」


「おっかないもんなー。」


「い、いわないでおくれよ。聞かれたら引っこ抜かれてしまうよ?」



妖精たちのわがままに優しく対応する赤のキング。

……会話になっていた。



「あの、お優しいんですね。」


「いやぁ、ありがとう。アリスに言われるとすごく嬉しいなぁ。」



満面の笑みになる。



「この子たちは生きているし、会話も出来る。ちゃんと対応しないと失礼だ。本当にいい子達なんだよ?」


「……ええ、とても優しくていい方たちです。」



「きゃぁ!アリスに誉められたわ!」


「ああ!アリス大好きだよ!」






その会話を遮るかのような草分ける音がした。

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