買い物がしたいんです
カンカンカン
ガガガガガガ
ギュイーンギュルギュルギュル
ジョビジョバジョビジョバ
「おー」
アイズちゃんの部屋を改装する工事の真っ最中である。
ドアを大きく、そして私たちの力でも開けれる軽い材質にしたりとかアイズちゃんが多少動いても壊れないように出来るだけ引っかかりそうな壁や場所を撤去したり等々。
おかげで内装は広く、アイズちゃん用の部屋ももうじき完成するだろう。
アイズちゃんも重いものを持ってもらったりで手伝ってくれてる。
仲間達は鈍いのか、良いやつなのか、それとも真性のバカである可能性が高いのか良く分からないがアイズちゃんとも仲が良い。
隊長と私がアイズちゃんと最初出会った時の苦労はなんだったんだと言いたい。
現に今も
「アイズー、部屋の壁の色にこだわりとかあるか?」
と言っているのがニック。
「やっぱりトリシェと違って女の子なんだから服も後でなんとかしないとな」
と後で殺す予定のブライアン。
「幼女と同居かぁ。俺の人生はこの日のためにあったんだな...」
とアイズちゃんの安全のために部屋に鍵をつけなきゃ行けなくなった理由を作ったリンロダコワ。
うーん...
なんかやっぱり納得いかない。
「どうした?そんな木材の上でどこぞの石造みたいなポーズして。筋肉のゴツさとかそっくりだけど。そんなことしてないでお前も手伝えよ」
「あ、隊長。私は華奢な美少女です。いや...やっぱあいつら馴染んでるなって。アイズと」
「ん?ああ、そうだな」
「馴染み過ぎてません?」
「リンロダコワがとくにヤバいな。俺も自分の仲間を衛兵に引き渡すことにはなりたくない」
「それは近い将来そうなるので良いんですけど」
「いや、良くはねぇよ」
「そんなことより私も今は大分慣れましたけどアイズちゃんには悪いけどやっぱりふとした瞬間怖くなるときがあります。隊長もそうでしょう?」
「まぁな。トリシェ相手にも俺は時々怖くなる瞬間が」
「おい」
「だがお前の言う通り、アイズへの恐怖心がお前の義兄しかり」
「義兄の話はしないでください」
「義兄しかり屋台の親父しかり、思っていたより低い」
「確かにそうですね」
そういえばあの屋台の親父さんも化け物扱いはしてたけど、『怖い』よりも『嫌い』という感じだった。
あの不本意ながら義兄もどちらかと言えば『好奇心』?だった気がする。
「でも、あの屋敷にいた兵士達はものすごい勢いで怖がってましたよね?」
アイズちゃんが剣を折り曲げたとき。
あれは一瞬でその場の皆が恐怖した気がした。
「見た目と大きさは確かに異常だが最初に比べれば身綺麗にもなったし、オークとかトロールとかと比べれば全然マシなんだがな」
「うーん?」
やっぱり何か変な気もする。
あの山で感じた恐怖は本物だった。
あの時は間違いなくアイズちゃんは私の中で
化け物だった。
「んなこと考える暇があるんだったら買い物行ってこい、アイズと一緒に」
「はーい、ってえ?今なんと」
「なんだそのブサイクな間抜け顔は」
「じゃなくて!」
「アイズと一緒に買い物行ってこい」
「いや無理です」
「ははは、お前に無理とか言う権利等無い」
「なん…だと、じゃなくて」
「引っ越してきたばっかりだからいろいろ雑貨とか家具とか足りてないんだ。特にアイズ用のサイズのものが何もかも足りてない」
「だからそうじゃなくて!」
「何が不満なんだ?」
「アイズちゃん連れてったら大変なことになるでしょう!あの時の焼き鳥の親父みたく!」
「また300本タダになるな」
それは...とても魅力的ですな
じゃなくて!
「とりあえずアイズを連れていけ、ヤバくなったら切り上げていいから」
「なんでそんなに行かせたいんですか?ブーブー」
「それは可愛い子だけに許された擬音だ、お前ではいろいろ...無理だ」
「さっき私に無理って言う権利とか無いって言っておいて良い度胸ですね」
「両手を首にかけながら言わないでくれないか?ちょっ今ミシッて言ったよ」
とりあえず隊長をいつものように殺った後は結局アイズと買い物に行かされる羽目になった。
「恐らく大丈夫だ」
とか言ってたけど全然信用ならん。
アイズちゃんは喜んでるみたいだけどさ。
「お買い物ー、お買い物ー、トリシェと一緒にお買い物ー」
ウキウキしてますね。
これだけ喜ばれたらそりゃこっちも悪い気しないけど。
でもなー、やっぱり買い物先でトラブルのような気がする。
と思ったけど。
「はい、しめて銀貨2枚ですトリシェ様」
普通に買い物が出来た。
いやちょっと待て何か違ったぞ今。
お店の人が全員震えている。
「あのう…」
ビクッ!
とても分かりやすい感じで怯えていらっしゃる。
そりゃそうだよね。
アイズちゃん初見は怖いよね。
「あのう…大丈夫ですか?」
「いえいえ、別に貴族様から圧力とかかけられてませんです。はい」
かけられたのか。
ウチの義兄がすみません。
あいつのドヤ顔が目に浮かぶ。
「ひぃい!そんな陰湿な手段でウチを営業停止に追い込まないで!ちゃんと誰が相手でも商売しますから!ひぃい!」
そこまでやったのか義兄。
「奥方様!お許しを」
まさかの姉のほうだった。
姉のドヤ顔が目に浮かぶ。
なにはともあれ隊長に頼まれていた買い物はすべて買うことが出来た。
ビバ権力。
貴族は嫌いだけど。
「アイズちゃん、そろそろ帰ろうか」
「はーい」
「といっても、買い物なんてつまんなかったでしょ?」
「ううん。楽しかったよー。トリシェと一緒だったしー」
と笑顔で笑いかけてきた。
本当ええ娘やね。
としみじみと思ってたら
ドン
あれ?
アイズちゃんが私を横に突き飛ばした。
「ぬおおおお!!」
私はというと吹っ飛んだ。
そうだねアイズちゃん凄い力だもんね。
私、空飛んでるよ。
そして当然重力に負けて地面にぶつかるが勢いが殺しきれず転がる。
ゴロゴロゴロ
そしてやっと止まったところで私の体はボロ雑巾のようになっていた。
死ぬわ!なんて力で突き飛ばしてくれてんのアイズちゃん!
「体中痛っ!めっちゃ痛い!ちょっとアイズちゃん何すん...の?」
とアイズちゃんに怒ろうとして見た先には、
無数の矢で貫かれたアイズちゃんの姿だった。
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