第10話 イエス絆的ボンド

どうも皆さんお久しぶりなような気もしますがトリシェです。

え?主人公のはずなのに目立って無いだって?

そもそも隊長さえ居ればいいんでね?だって?

HAHAHA

・・・

・・・

ふー。

というか私、こういうことしてる場合じゃ本当に無いんですよね。

なんでかっていうとね。


「ZZzzzz...」


私今アイズちゃんに抱き枕にされてます。

誰か助けてください。

なんでこういうことになったんだっけ?


隊長が私を見捨てて貴族なんかと会いに行ったのでアイズちゃんととりあえず留守番するハメになった私。

隊長が私を見捨てたせいで野宿するハメになった私。

隊長が私を見捨てたせいで風呂に入れない私。

ということでなんかあの隊長の野郎が貴族とおいしいもんでも食べながら今回のアイズちゃんの処遇というかなんか説明しに行くみたいなてきなことをしているなかで。

私は待ちぼうけ。

そう、でも一人じゃないもん!

アイズちゃんがいるから。

・・・

帰りたい。

そしてさらに衝撃の新事実。

アイズちゃん、女の子らしいです。

ずっと僕僕言ってたから気づかなかったんだけど私もアイズちゃんももう色々汚れていたので汚れを落としたいということになったんですよ。

とりあえず水浴びでもして汚れ落とそうぜ!(プレゼントされたハーフうさちゃんの血やら小屋に入ったときの死臭を落とすため)とアイズちゃんに提案したところ一緒に入る流れになってしまい。

案内された湖っぽい何かに入りにいくアイズちゃん。

そしたら見る見るうちに湖が汚染されるかのように黒くなっていき。

私が入れなくなりました。

何年も水浴びをろくにしていなかったらしく汚れがたまっていたらしい。

そして出てきたところで凝視してしまった。

いや、その、あの大事な部分を見てしまったと言いますかなんというか。

今まで体中が汚れていたから全然気になってなかったけど女の子だったんですね。

僕っ娘ですよ。僕っ娘。


「アイズ・・・ちゃん!?女の子だったの?」

「そうだよ~」


とりあえずいろいろ衝撃を受けつつ水浴び出来なくなっちゃった系の私は彼女の服をなんとしようと思いその辺の木々の葉っぱ達をアミアミ。

サバイバルな生活には必須なのよ。周りにあるものをなんでもいいから利用する。

ふっ。私の葉っぱ編みスキルはLv100です。

むなしくなってきた。

服というかサイズの調整が上手く出来なかったり時間が無かったりでアイズちゃんがもしわがままボディだったらちょっとイケナイ感じの図になっている何かが完成。

きわどい下着みたいな?


「わーい!お姉ちゃんありがとうー!!」


と喜んでくれたのでよしとしよう。

本当、外見が怖くなければ反応は可愛いやつよのう。

外見が怖くなければ。

でも水浴びして汚れが落ちた分大分印象が変わったなー。

前までは巨大なゴブリンみたいなイメージだったけど今はもうちょっと人間っぽい?

やっぱり体と手足、顔の比例がアンバラスで怖いけど。


そして隊長に置いていかれたせいで食事も野営しなければいけない。

隊長に置いていかれたせいで。

きっと美味いもん食ってるんだろうなぁ。

仕方が無いのでアイズちゃんに貰ったハーフうさちゃんの調理をすることに。

というかアイズちゃん何食べるの?

普通にうさぎでいいのかしら。

ていうか量足んなくない?

だって私の二倍以上なのだ。

二倍以上食べるよね?

こう人一人をモリモリと...

いかんいかん!

アイズちゃんいい子だからマジいい子だから。

そして出来るだけ量を増やすために鍋という形にしたけど...元々用意してた食材全部ぶちこんで。


「出来たよーアイズちゃん。冒険者しき花嫁修業で学んだ家庭料理鍋」

「うわー、凄い。トリシェ良いお嫁さんになれるねー!」


純粋なことが必ず良いことだとは限らないことを私は知った。

汚れちゃった...人として。

この責任は後で私の冒険者としての育ての親である隊長に取ってもらう。酒で。

とじっと私を見ているアイズちゃん。

やはり私が主食どぅえすか!

私がメインディッシュですか!

美味しくないよ!筋肉で筋張ってるよ!


「えっとその、鍋一緒に食べない?」

「・・・」


え?何この空気。

一緒には嫌だって?

一緒にじゃなくてあなたを食べたい方面?

それは殿方に言われたいセリフなので激しく遠慮したいですな。


「・・・」

「あれ?あ、ごめん何か食べれないものでも入ってた?」


無言が怖い!

いつものノリで肉から何から食えれば平気、という勢いで鍋にぶち込んでたのはさすがにまずかっただろうか?


「ごめんね、作りなおすからちょっと待ってて」

「僕、食べていいのー?」

「え?いやその私じゃなくて鍋をならオケですけど」

「お母さんが、あんたは食べなくても平気だから何も食べるなって言ってたからー」

「・・・」


言葉を失ってしまった。

この子のお母さんはどうしてそこまで。

なんでここまで。

どうして自分の子供を憎めたのだろう。

どんなに可愛くなくても。

どんなに異常でも。

どうして。


「いままで何も食べてこなかったの?」

「うん、お腹は空くけど我慢すれば大丈夫ー」


そしてそれよりなにより


何で生きてるの?


「食べていいからね。ほらいっぱいあるし」

「・・・」


アイズちゃんは無言で鍋に私が葉っぱ服の用意のときについでに木の枝で作った巨大スプーンを使って恐る恐る口に含んだ。

スプーンの持ち方も使い方が分からないのか柄の部分をグーで握りながら慎重に口に運んでいく。

とたん涙が溢れていた。


「・・・ぅ」


母親に言われたことを忠実に守るこの子は泣くのを我慢している。


「おいしい...ぐすっ...おいしいよ」

「全部食べていいからね」


ああ、いけない。

私も涙もろくなってしまう。

この子と一緒にいると弱かったことろの私を思いだしてしまう。


涙でしょっぱくなってしまった料理を食べ終わった後に就寝予定。

のはずが


「ねぇ、トリシェー」

「はい、なんざんしょう?」

「一緒に寝てもいい?」

「!?」


違うんですよ。

確かに心の距離的な、

信頼てきなものは二人の間で生まれてるイエス絆的なボンド。

でもね、違うの。

それとこれとはまたちがくて。

ぶっちゃけ寝てる間に私が握リ潰されそうで怖いです。


「え、いやー、その、パーソナルスペースが無いと私眠れなっ」

「駄目ー?」


私にそんな断る権限等あるはずもなく。

冒頭に戻ります。

ね、眠れねー!!!

ときどき私を掴んでるアイズちゃんの手がぎゅっと引き締まるのが怖ええ。

ひいいいいいい!!!


「お母さん・・・」


と言いながら握りしめてくるから起こすわけにもいかず。

助けてー!隊長!いやあいつ意外と役に立たないから誰でもいいから助けてー!!!


そして次の朝、爽やか笑顔で出迎えに来た隊長を目が充血した私が殴り飛ばしてたのをアイズちゃんに見られ怖がられていたと知るのは大分先の話である。

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