第6話 手続き

「隊長、後先何も考えずに行動するのやめましょうよ」


隊長の爆弾発言の後、とりあえずアイズちゃんのお母さんらしき白骨死体を降ろし、

近くの地面に皆で協力して埋めてあげた。

話を聞く限りではとんでもない母親だったみたいだけどアイズにとってはお母さんだし、ちゃんと弔ってあげないと。

小屋の中にあった腐った肉や骨は放置だとさすがにまずそうだったのでアイズに許可を取り、小屋全体に火をつけることとなった。

隊長と一緒についていくことを決めたアイズ。

それをジト目で見つめる私。

そんな私から必死に視線を逸らす隊長の三人で他に引火しないよう火が消えるまで見守っている最中である。


「隊長、私を拾ったときもいろいろ言われてたじゃないですか」

「いいじゃねぇか、結果こんなたくましく育った部下が手に入ったんだ」

「たくましくは余計です。アイズをあなたいったい何処でどうしてDOする気ですか?犬や猫じゃないんですよ?」

「そりゃ、なんとかなるだろ」

「あの大きさのアイズを何処に匿うんですか?」

「そりゃあ、その馬小屋かなんかで?」

「仮にそれでアイズがよかったとして周りがアイズをどう思うか・・・」

「大丈夫、俺らの仲間は馬鹿だから分かってくれる」

「そこは心配してません」


実際私が入ったときも隊長ロリコン疑惑で何日で手を出すか賭けてた連中だ。

仲間の馬鹿共は一発尻に蹴りを入れればどうにかなる。

最近それをやると恍惚とした表情で


「もっと...」


と切なげに言われることがあるのは私の気のせいだということにしてある。


「私達が滞在している場所にアイズをつれてったらどうなります?」

「モンスターパニック!」

「嬉しそうに言ってるんじゃねぇよ」


状況本当に分かってるのかこのおっさん。

アイズはというと小屋が燃えるのをジーッと見てまったく動かないので何か感傷に浸っているのかそもそも何を考えてるのか分からない顔をしている。

ぶっちゃけ未だにあの顔は怖い。


「じゃあ置いてけって言うのかよ、小屋まで燃やしといて」

「そりゃあ、置いてくわけにはいかないでしょうけど...でも」

「だからもういいじゃないか。帰ってから考えよう!はい、この話終わり!」

「帰ってからじゃまずいんだってば」

「あーあ、聞こえない」


両手で耳を塞いで聞こえない振りをする独身男性の図がここにあった。

なんとも見苦しい。

あー、もう帰りたい。

あ、このまま帰っちゃ駄目なんだった。


「仕方ねーなぁ...出来ればこの手は使いたくなかったが」

「あるんだったら最初っからその手を使ってくださいよ」

「いやー、だってお前絶対嫌がるし」

「私が?この状態で帰ったらまず確実にテロですよテロ。アイズもろとも討伐エンドまっしぐらですよ。こんあ状況で何を嫌がると?」

「それはそれで楽しそうな気もする。でも後で絶対文句言うなよ」


やけに今回は念を押すなー。


「俺がまず一人で戻って状況説明する。その間お前今晩アイズと一緒に野宿な」

「うぐぅえ!?」


アイズと一緒に野宿!?


「どうしてそうなるんですか!?」

「だって今アイズ連れてったら武器で熱烈歓迎されるだろう?」

「ほぼ間違いなく」


皆で武器を持ってちょっとしたサバト的なことをされてしまうこと請け合いである。

いあー、いあー


「だったらその民衆を黙らせる人を説得しなきゃいかんだろ」

「だからってなんで隊長が行くんですか!?嫌ですよ野宿!お風呂に入れなかったらますます乙女じゃなくなっちゃう!」

「もう手遅れだから心配するな」


ばっさり切られた。


「お前の乙女乙女詐欺はともかく、今回話しに行く相手が依頼主でな」

「畜生...こんな体になったのは誰のせいだと」

「人聞きの悪いことを言うな、立派な冒険者ボディではないか」


必要があったとはいえ、まったく可愛くないこの筋肉ボディ。


「それで?依頼主に話に行くなら私でもいいじゃないですか?ていうかそんな人が役に立つんですか?」

「今回の依頼主はちょっと特殊でな。まぁ、あれだ」


ためらうように隊長が私に言う。


「お前さんの大嫌いな貴族様ってやつだ」

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