第13話 大人って大変

「それではトリシェと隊長が戻ってくる前にどんなドッキリを仕掛けるか会議を始めようと思う」

「ついにこの会議が始まってしまったか…今度も告白系で攻めるのかい?」

「ふっ。この前トリシェにイケメンからラブレター来てるって言って俺が書いたものを渡した時以来だな。隊長含めて全員あの世一歩手前までボコられたっていうのに...さすがだぜ」


どうも皆さんトリシェです。

とりあえず、戻ってくるまでにいろいろ大変な思いをして。

悩んで。

いろんなことをね、うん。経験してきたわけなのよこの短い期間でね。

だからね、いいですよね。

さらば、友よ。


「オーマイガー!!トリシェが帰ってきたぞ!!!」

「聞かれたか!?違うんだ!俺だけは意表をついてクラシックなブーブークッションでいこうとしたのにあいつらが」

「メイデー!メイデー!!」


私が帰ってきたことによる阿鼻叫喚。

その景色を不思議そうに見ているアイズちゃん。

その後ろに避難している隊長。


「ねー、なんでトリシェあんなに怖がられてるのー?」

「それはだな、バレンタインゴリラトリシェと呼ばれる痛ましい事件があったのだよ...」

「ふーん、そうなんだー」


バレンタインゴリラトリシェ事件

バレンタインにラブレターを貰ったと思ったトリシェを仲間全員で待ち合わせ場所でドッキリでしたと伝え、お互い独り身、今年もよろしくな!と大きなチョコレートを渡した後に起こった惨劇を現す。後に被害者は


「あれは太くてゴツくて動きがパワフルで...そう、まるでゴリラのようだった」


と語っている。

尚その時のトリシェは滅多に身に着けないスカート姿や化粧をバッチリ決めていたため、暴れた際は涙と返り血で化粧が溶けてるのも相まってより怖くなっていたそうな。


「なんでトリシェは仲間の人たちをボコボコにしてるのー?」

「なんでだろうね?仲間との間違った交流の育みかたかな?」

「大人って大変なんだねー」

「ねー」


10分後


私が一通り仕事を終えた後に改めて残りの仲間三人とアイズちゃんをご対面させてみた。

「この顔がパンパンになってるのがニック。真ん中で腹を抱えてうずくまってるのがブライアン。『もっと...』と気持ち悪い喘ぎ声を上げてるのがリンロダコワ。覚えなくていいのよアイズちゃん」

「え?あ?え?覚えたよー?」

「覚えなくていいの。分かった?」

「トリシェ、子供への教育方針にそういう圧迫したものは良くないと思うぞ」


いやいや、こ奴らの存在のほうが悪影響でしょう。


「ていうかあんたらアイズちゃん大丈夫なわけ?」

「ぐふっ、いや驚いてるさ。でもそんなことより多分出血多量のほうがやばいというか」

「じびゅえんにぢだざれでいとぅがらオゲ(事前に知らされていたからオケ)」

「案外驚かないものね」


私なんて最初パニック起こしていたというのに。

そしたら隊長に


「こいつらだぞ。まともな神経とか無いのだけが取り柄だぞ?」


と言われすごい納得した。

多少アイズちゃんが身綺麗になってるのも要因かもしれない。


「俺は納得してないぞ!」


と思ってたら一人だけ文句を言うやつが出てきた。


「どうしたよリンロダコワ?何か不満でもあるのか!?」

「あるね。アイズちゃん?だっけ?一つ...いや二つ重要な質問をしていいかな?」

「なーにー?」


その鬼気迫る感じにいつものふざけた空気は感じられなかったので黙って成り行きを見守ることにした。

長い沈黙の後


「何歳ですか?」

「えっと…たぶん十歳ぐらいかなー?」

「女の子ですか?」

「うん、そうだよー」


それを聞いた彼はそっとアイズの手を握り、


「ウェルカムマイエンジェル」


と最高に爽やかな笑顔で言い放った。


「このロリコンがー!!!!」

「幼女!」


殴られながら幼女と叫びながら倒れていくリンロダコワ。


「それが重要な質問かこの野郎!」

「重要で何が悪い!!!あ、僕のことはお兄ちゃん、いやおにぃたん、もしくはちょっと意表をついてアニキなんてのも」

「えっとー、お兄ちゃん?」

「フォー!!!フォー!!!」


収集がつかないので彼を黙らせることにした。


「ねぇートリシェーあの人白目向いて起きないよー?」

「いいの。目を合わせると呪われるから」

「とまー、アイズが全員に受け入れらたことだし新しい拠点に移る作業始めるぞ」


隊長がしれっと事態が収拾してから指揮を取りだした。


「仲間をまとめるということをしてください」

「秘書にすべて任しております」

「私か」

「お前だ」

「泣いていいですか?」

「ということでほらお前らちゃっちゃと始めろ」

「「「うぃーっす」」」


もう回復した仲間三人がもう既に荷造りしてあったのか機敏に引っ越し作業を始めだす。


「うし、じゃあ俺らはもう一ヵ所周りに行かんとな」

「え、どこですか?」

「いい飯食えるぞーきっと」

「おい、何処だよ隊長。すごい嫌な予感がビンビンしてますよ」

「ビンビンとか...そんな卑猥な言葉どこで覚えたの?お父さん悲しい」

「隊長?」

「あ、やめて首絞めないで。落ちちゃう。落ちちゃう~」

「隊長?」

「あ、やべー本当に花畑が見えてきた。言う、言います、助けてください」

「で、何処?」

「貴族ん家、テヘ♪」

「私気分悪いので酒場に行ってきます」

「アイズ、トリシェを確保」

「はーい!」


アイズちゃん!裏切ったな!!


「離せー!嫌だー!!」

「仕方が無いのよ。大人の事情ってやつでね」

「大人って大変なんだねー」

「ねー」

「離せー!!!」


私の願いは聞き届けられず。

貴族のいる場所へアイズちゃんと隊長によって強制連行されるのであった。

あー、帰りたい。





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