宮田秩早

ここではないどこか、日常に息づく『怪』なるものの素描短編集。 移り行く季節、ふと一息ついたときの一抹の寂しさ、不思議な隣人との間に通い合うなにか… 短い物語の中に、豊かな抒情が香る…続きを読む

人とのつながりが拡散してゆく現代社会において「そこに『あなた』がいる」という感触は、じつはとても希薄なんだと思う。 目の前にいても、その存在は曖昧で、その曖昧さに耐えきれなくなった…続きを読む

同性なら分かるだろう 血のつながりがあるなら 後ろ姿を見てきたなら…… 分かるからこそ、敢えて「私は違う」と訴えたい瞬間がある。 おそらくは完全にわかり合うことはないけれども、互…続きを読む

十一月一日に出会ったから、その幽霊の名は「シモツキ　イチロウ」さん。 （幽霊だから）迷惑だけど害はなさそうだから、なにか自分と関係がありそうだから仕方なく、で始まったかかわりのな…続きを読む

140字のなかに、罠がある。 140字のなかに、闇がある。 140字のなかに、悲哀があって、 140字のなかに、不安がある。 題名に騙されてはいけない。 騙されないために、読むこ…続きを読む

『落下』が晴れがましいこととされている世界で、『落下』を教える学び舎で出会ったふたりの物語。 秘密を抱え、ほかの学友たちのようには『落下』に夢や希望を抱けずにいる、りつかと、りつか…続きを読む

行き場のない子が流れる。 行き場のない女が燃える。 行き場のない世界が燃えて、ただ跡には娘の誇りと哀しみが匂うばかり…… 言霊のすべてに世の理不尽が宿っていて、震えるように哀しく…続きを読む

淡く蕩けるような「怖い話」。
おさなごの語りに手を牽かれてゆくさきに見る、狂おしい情念。
ねずみ、かわゆいですね……

ためしてしまったら、負けなのだ。 結果はたぶん、問題ではなくて、一度ためしてしまったら、人はまた試さずにはいられなくなる。 そして、勝ち続けることはできない… 人の心の薄暗がりを覗…続きを読む

　人生の物語だと思う。 　そこに生まれ、土地に育まれ、出会ってきた人々と諍い、愛す。 　誰を憎んで良いのかさえ分からない悲しみに見舞われて、愛しいものを失ったり、生まれたときから…続きを読む

何故、『母』は盲目の子の話を語ってきかせたのか、何故、『子』は『弟』を選んだのか、過剰な『何故の解』を敢えて語らぬこと、それを埋めるように山河の暮らし、妖かしの定めを美しくかつ残酷…続きを読む

すべてが管理され、安心で満たされた都市の物語。そこで生まれ、旅立とうとする者と留まる者との会話を通じて、「安心」と「幸福」がかならずしもイコールで結ばれない、だれもが知っているけれ…続きを読む

歴史はだれのものか、私はもしこの本の「著者」であるターミ・ポアットに直接聞く機会があるなら、訊ねてみたいと思っている。 大国に囲まれ、しかし海沿いにあって貿易は盛んであることから…続きを読む

戦わねばならない時代に、戦う自分に誇りを持つ女性と、戦わない自分を信じている男性の、一瞬の交錯の物語。 互いに、互いの価値を認め合うふたりのあり方が、凜々しい。 読後、青空に十字に…続きを読む