雲曳きの配達人

作者 凪野基

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★★★ Excellent!!!

軍属パイロットのメグを世間は「女神」と崇め奉った。
メグはただ空を駆け、敵機を墜とし、国のために働く、
それだけを望んだ。周囲の声など煩わしいだけだった。

「女神」は墜ち、負傷して、鄙びた温泉街で療養している。
その田舎町へ郵便物を届けに来る緑色の複葉戦闘機は、
前線の一流パイロットもかくやというほどの曲芸を見せる。

メグとルイ、2人の卓越した飛行機乗りが各々抱く矜持と理想。
戦時下にあれば「正しい」のはメグなのだが、なぜだろう、
メグはルイを前にして、「非国民」を詰ることができなかった。

淡々と静かで端正な筆致で綴られる、軍属パイロットの静養。
あるいは、1人の女性に訪れた束の間の安らぎ、だっただろうか。
空に魅せられた彼女は何を思い、その休めた羽根で飛び立つのか。

★★★ Excellent!!!

 パイロットが飛べない時、溜まった鬱屈を感じるのは何故か?過酷な仕事だし、望まぬ徴兵の末の任務もある。怪我だってするし死ぬのは怖い…それでも、空が恋しくなる。そんな空を、命のやり取りではなく、手紙のやり取りのために飛ぶ者がいる。戦闘機のパイロットと、定期郵便のパイロット…二人が飛ぶ空は一つ、そしてどこまでも繋がっているのに。二人は拒絶し合うことも、羨み合うこともなく、ただ語らう。それは、二人共飛行機を降りればただの人だからかもしれない。とても穏やかな時間を感じる力作です、オススメ!

★★★ Excellent!!!

戦わねばならない時代に、戦う自分に誇りを持つ女性と、戦わない自分を信じている男性の、一瞬の交錯の物語。
互いに、互いの価値を認め合うふたりのあり方が、凜々しい。
読後、青空に十字に交差する飛行跡を幻視する。
いまは別々の場所で、別々の戦いを生き抜くふたりだが、いつかどこかでまた、その行跡が交差することもある……そんな気になる。
この空が続く限り。