人とのつながりが拡散してゆく現代社会において「そこに『あなた』がいる」という感触は、じつはとても希薄なんだと思う。
目の前にいても、その存在は曖昧で、その曖昧さに耐えきれなくなったとき、人は強い口調でその不安を押しつけようとする。あるいは、曖昧すぎて、それを理解すべき対象ではなく、大雨に祟られるみたいな現象としてやり過ごそうとする。
そんな「しんどい」日常のなか、不意に訪れた「そこに『あなた』がいる」実感。
理解にはまだ遠いけれど、その不意の実感が瑞々しい作品。
たぶん、相手もまた、「そこに『あなた』がいる」感触を得て帰ったに違いない……