橘夏影

珠玉のジュブナイルです。 作品タイトルを見たとき、ふとした先入観が浮かぶかもしれません。 でも、それを抱いた瞬間から、あなたもまた この舞台の“演者〟のひとりです。 主人公の…続きを読む

しなやかに　軽やかに 笑って　泣いて 時々ホラー 死に方なんて　選べない だいたい　呆気なく ときに　残酷だ だったらやはり 話はもどって しなやかに　軽やかに 泣いて　笑っ…続きを読む

誰と、どこで、どうして、何を求めるのか。 性的主体性とは本来、そうやって自分の身体や欲望のあり方を、関係性の中で選び直すことだと思います。 それを本作は、鏡妙子という主人公を通し、…続きを読む

『私には、真似できない。』 それはただのキャッチコピーではありませんでした。 作品に触れている間ずっと、額にうっすらと汗をかくような感覚があった。 二錠の月白は断絶を越えるための…続きを読む

まずひと言で、登場人物たちの息遣いを感じました。 歴史小説には馴染みがなかったのですが、良い意味で枠組みを感じさせない普遍的な人間ドラマに、幾度となく胸を打たれました。 十代で…続きを読む

読んでいて、何度か 「これは……私はいま、試されているのか？」 と思いました。 笑っていいのか、引くべきなのか、難しい顔をすべきなのか。 だが、まさにその「揺らぎ」こそが、この物…続きを読む

将棋は知の格闘技――それは幻想だったようだ。 この物語において、盤面はただの前戯である。 勝負を決するのはAIでも筋読みでもない。 視床下部と桃色の電磁波である。 如月美麗。あ…続きを読む

シリアスとエロスとバイオレンスとユーモアの大博覧会！です。 地味深い良い話なんです。 それは他の皆さんのレビューから察せられるでしょう。 実際シリアスが基軸でストイックに話が進…続きを読む

多くは語りません。
ミステリーなのでね。
　
でも勤め人として思いました。
いっそ、このようであってくれ、と。

一見、囚人という異物の象徴であり、孤高の「悪魔の代弁者」とされる男。 だが実態は、社会にただ無関心な大衆の象徴でしかない。 彼は自ら選んで異物となったわけではない。 ただ、社会か…続きを読む

そう思った瞬間、あなたはもう不条理に利き足の足首を掴まれています。 この物語を見てしまった時点で、おしまいです。 ご愁傷様です。 もう終業時間ですので、お引き取り願います。 え、帰…続きを読む

静かに始まり、しかし燻るように燃え渦巻く物語でした。 歴史を知る方なら、冒頭で語られる「あの方」が誰で、「俺」が誰であるかをすぐに察するのでしょう。私は無知ゆえにそれを知らずに読…続きを読む

読後、虫を噛み潰したような、嫌な感覚がじわりと残りました。 創作だと断りがありながら、その筆致には妙に生々しいリアリティがあります。 わざとらしくも、悲壮ぶってもいない。ただ淡々…続きを読む

人は常に、なにかを失い続けている。 人は常に、なにかを積み重ねている。 どちらも真実のように思えます。 失ったことに目を向け、悼み、前を向くこと。 それもまた、私たちが生きる…続きを読む

50歳で始まった、訳ありの結婚生活。 恋愛感情のない結婚――だったはずが、静かで穏やかな日々のなかで揺れ動いていく心。 本作は、傷ついた過去を持つ女性・中野カナコと、その幼馴染・…続きを読む

「雨」。それは、花を地に散らし、裾を濡らす。 美しいものを汚し、腐らせる。 「夜」。それは、今日と明日の境界にある余白。 まなざしを覆い隠し、「正しき者」は眠りにつく。 そんな…続きを読む

最初、私は沢渡くんを受け入れられませんでした。 その性指向ではなく、姿勢ゆえです。 独善的で、他人の痛みに無神経で、何よりも他者に土足で踏み込むようなその言動に、胸がざわつきまし…続きを読む

言葉通りの意味じゃない。 目に見えるものが、すべてではない。 その奥には、いつも祈りがある。 それは、星に似ている。 星はいつもそこにある。たとえ目には見えなくても、そこに在り続…続きを読む

私の母も、オールドファッションが好きでした。 『強くなったのは、一人になっても生きられるようにするためで、決して一人になりたいからではなかった』 この言葉が世相を象徴しているか…続きを読む

――たったひとり、なんかじゃなかった。 青の底で、ふたりは、静かに息をしていた。 最初の二人の会話から、一気に――それこそ、水底に沈められるかのように――物語に引き込まれました。…続きを読む

頭から煙を出すほど一途で、初夜に向けて全力でがんばるチュンチュンが、愛おしすぎて何度も笑ってしまいました。 けれど、ただのラブコメじゃない。 恋する気持ち、不安、嫉妬、そして「心…続きを読む

「祈り」を感じました。 木山喬鳥様の素晴らしいレビューで語られているように、このエッセイ集には喜怒哀楽様々の、滴るような生の感情が溢れています。 様々な内容がある中で、敢えてよ…続きを読む

日本純文学の系譜を感じさせる、どこか懐かしくも、その場のざらついた空気感まで感じられる精緻な描写に魅了されます。 深い教養に裏打ちされた文学参照や、美術方面の造詣の深さも感じられ…続きを読む

幼い主人公の端的な言葉で語られる世界は、五感を刺激する瑞々しい感性に彩られている―― ひらがな中心の文体は、それが子どもの視点であることを示すのみならず、とろとろと流れる雅文のよ…続きを読む