呉の知将・陸遜。
三国志はとても多くの人物が走り抜けて行きますが、正しい人って少ない。
やはり乱世ですから、その正しさというのはとても危ういというか。
だからこそ、皇帝も覇王も、皆、正しさを求めて、智将を登用するのだろうと思います。
私の浅い知識ですが、陸遜という人は、正しい事を目指した人で。
民を救おうと、農業や産業にも力を入れたり。
けれど、その正しさが、ではどんな状況、どんな人にも通用するかというと、決してそうではないという悲しさ。
昔だから、自分にかけられた嫌疑や罪状は、一族郎党にも回るんですよね・・・。
信じて尽くして来た主からの仕打ち。
失意、絶望、義憤を冷徹に切り取ったお話。
三国志好きの方には、深く刺さるお話だと思います。
ありがとうございました。
静かに始まり、しかし燻るように燃え渦巻く物語でした。
歴史を知る方なら、冒頭で語られる「あの方」が誰で、「俺」が誰であるかをすぐに察するのでしょう。私は無知ゆえにそれを知らずに読み進めましたが――それでも、肌の裏が爛れるような感覚がありました。
語りは抑制され、理知的で、整然としている。それだけに、淡々と剥いだ皮のように折り重なっていく怒りと、静かに膨れ上がる熱が、かえって切実に迫ってきます。
じっとりとした汗の感覚、赤い烏の幻影。いずれも象徴として深く刻まれ、読後には確かに喉の奥に何かが残る。その積み重ねの末に置かれた、最期の決断――あの瞬間、すべての比喩が報いとなって悪果を結びます。
「信頼」の名を借りた従属。「忠義」の名を借りた搾取。
自らが撒いた種を、赤い烏が啄み食い荒らしていく――そのイメージがただ、文字を追う目の奥に焼きついたまま、名付け得ぬものとして残るのです。
歴史を知らずとも、物語の魂に撃たれる。 これは、そういう作品でした。
三国志での陸遜について、一般的に夷陵の戦いで劉備を破った、若き俊英のようなイメージをされる方が多いと思います。この作品での陸遜は、呉の末期の頃――孫権との関係が破綻していた頃の物語となります。
作品の見どころとして、構成の素晴らしさがあったように思います。登場人物は陸遜、孫権からの使者で、孫権は出てきません。使者は孫権の理解しがたいお気持ちを代弁します。そして、陸遜は孫権への憤りを深めていくのです。修復できないほどの関係性の破綻を見事に表現されていました。
陸遜が憤る気持ちの表現に圧倒され、終盤に向かうにつれて鳥肌が立つ感覚がありました。熱や汗という言葉がしきりに登場しますが、読んでいて感じたのはひたすらに冷え切った思いでした。
三国時代というと、黎明期や三国鼎立の頃ばかりが有名ですが、末期の頃も掘り下げるべき物語があるかもしれないと感じさせてくれた作品でした。
『赤い烏』は、歴史の重みと個人の葛藤を見事に描き切った短編や!📜✨
主人公が仕えてきた主君との関係、忠誠と裏切り、そして時代の波に翻弄される人間の姿……これらを濃密に描いた、胸に刺さる作品やった!
物語の中で繰り返し登場する「赤い烏」という象徴的な存在が、読者に強い印象を与え、ラストの展開をより深く感じさせる。この作品は、単なる歴史小説ではなく、心理描写の妙と詩的な表現が光る、文学的にも優れた作品やで!✨
🔹 作品の魅力
1️⃣ 主人公の心理描写が圧倒的!
主人公の視点で語られる物語は、過去の栄光と現在の屈辱の対比が鮮やかで、読み手に深く共感させる力がある。
使者の言葉がどんどん響かなくなっていく描写や、汗や暑さの感覚が変化する場面など、細かい心理描写が本当に見事やった!🔥
2️⃣ 「赤い烏」の象徴性
この物語のキーワードとも言える「赤い烏」。
本当に存在するのか、それとも主人公の心象風景なのか……?
この曖昧さが物語に深みを与え、読者に考えさせる余韻を残してる!✨
3️⃣ 歴史の流れと個人の運命
戦乱の時代に生きる者の宿命として、忠誠を誓ったはずの主君との関係が崩れ、長年の忠義が無に帰していく……。
そんな現実を、主人公は最後にどんな決断を下したのか?
歴史小説の醍醐味である「権力と忠誠」「栄光と没落」が、わずか1話でここまで鮮烈に描かれてるのが本当にすごい!
🔹 こんな人にオススメ!
✅ 歴史小説が好きな人! → 実際の史実をベースにしたようなリアルな描写が光る!
✅ 心理描写の深い作品を楽しみたい人! → じっくりと人物の心の動きを読み解くのが好きな人にピッタリ!
✅ 読後に考察したくなる物語が好きな人! → 「赤い烏」の意味を考える楽しさもある!
🌸 総評 🌸
『赤い烏』は、歴史の流れに翻弄される人間の姿を、詩的かつ緻密な筆致で描いた名作やった!✨
わずか1話という短い尺の中に、圧倒的な情報量と感情が詰め込まれていて、読後にじわじわとくる余韻がたまらん!
特に主人公の心理描写が秀逸で、「赤い烏」という象徴がラストに向けて強烈な印象を残す……ウチ、この作品めっちゃ好きやわ!💖
歴史小説好きはもちろん、心理描写の細かい作品を探してる人にもぜひ読んでほしい!📖✨
ユキナ(甘口)💞
三國志は呉の将軍、陸遜。
君主である孫権に仕え、名将として重用されながらも、後継者問題に端を発して袂を分かち、失意の下に憤死したとされています。
あまり聞き慣れない「憤死」という死因ですが、怒りのあまり血圧が上昇したり心臓に発作を起こして倒れる…という直接的な場合もれば、怒りの勢いで自ら命を絶つ、抗議の意味で絶食したまま命を落とす…等、間接的な場合もこれに含まれるそうです。
さて、陸遜の「憤死」はどうだったのでしょうか。
この物語の彼の最期に、私は真実の一端を垣間見た気がしています。それほどまでに、死を前にした感情の奔流が凄まじいからです。
忠臣であったが故の失意や落胆が怨恨へと変化したのも束の間、自らの怒りに気付いてからの、文字通り火の点いた様な激情。
陸遜が抱える感情が移り変わっていく描写はあまりに圧巻で、息を呑まざるを得ません。
同時に、彼の持つ怒りと、夏という季節の親和性の高さに着目されている事にも唸らされました。
夏の耐え難い暑さがそれとなく差し挟まる事で、塗り潰せない赤い色が、文字面からくっきりと浮かび上がってくる気さえします。
ふっつりと終わってしまう最期の喪失感、彼が落命した年号から付けられたタイトル。
どこを取っても作者様の三國志愛が感じられるのは勿論ですが、私は、「怒り」というたったひとつの感情を、これほどまでに細緻に、そして生々しく表現されている事にこそ、この作品の良さが詰まっていると思っています。
陸遜をご存知の方も、そうでない方も、そして書き手様なら一度は目を通していただきたいこの物語。
彼の憤怒にあてられる事なく、是非お読みいただきたいです。
三国志というと劉備、曹操、孫権、諸葛亮、関羽などという英雄たちを思い浮かべる人は少なくないだろう。少し三国志を知っていれば一度は耳にしたことのある呉の知将「陸遜」。だが、彼の最期を知る人は少ない。
本物語は「さいかわ葉月賞」というテーマが設けられた自主企画に寄せられた作品だった。そのため、テーマである「夏」と物語をリンクさせなければならなかった。
誰が陸遜の最期と「夏」を連想しただろうか。
三国志ファンならもちろんのこと、三国志を知らない人であっても読んでいただきたい一作である。陸遜の最期を知ってから、陸遜という人物がどんな漢《おとこ》だったのかを知るのもまた面白いかもしれない。