概要
線なんて、どこにもないのに
夕暮れの帰り道を、母親と息子は歩いていた。息子は社会からずれていた。息子は社会と食い違っていた。息子には線が理解できなかった。
おすすめレビュー
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- ★★ Very Good!!心揺さぶる、子どもの純真な世界
「線の見えない子ども」は、読んでいて心が揺さぶられる作品でした。この物語は、一見普通の母子の日常の一コマを切り取っているように見えますが、実はもっと深いメッセージが込められています。
主人公である息子の純粋な視点と、彼が持つ特別な感受性が、私たちに普段は見過ごしてしまう世界を見せてくれます。社会の「線」、つまりルールや常識に捉われずに、自由に世界を見る子どもの目が、新たな発見と驚きを提供してくれます。
母親の役割も印象的です。彼女の愛情と、息子を守るための苦悩が繊細に描かれており、読む者の共感を呼びます。彼女の眼を通じて、子どもと社会との間に存在するギャップを感じ取ることができます。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界のえぐり出し方が、ただただ見事
「7歳までは神のうち」という言葉、あるいは「七五三」という文化をご存知でしょうか?
ほんの数十年前までは今より食糧が少なく医療や衛生環境が不十分なのが当たり前の時代でした。そんな中で子どもというのは非常に無くなりやすく、7歳までの死亡率が高かったのです。そのような時代の中で3歳、5歳、7歳は子どもが健やかに育った節目の歳として祝われ、その後の健やかな成長も祈願されてきました。
このように子どもというのはいわば極めて存在が希薄で世界との境界が曖昧ないきものです。
この作品では(テーマは違いますが)、存在としての子どもの危うさやイノセントさが見事過ぎるほどにえぐり出されています。