「ペーパーウェル 短編」を含む小説

おれの亡骸は、雪に埋もれて見えなくなる。 誰にも気づかれない。 動物たちも眠っている。 おれは消える。 死んでもなお、肉体はこの世に存在しているのに、おれはこの世から存在が消える…

【ペーパーウェル14「欠片」参加作品】 あふれでてうごきだす、大人の友情とその先

コウジと手を合わせに行ったとき、おれたちの顔を見て奥さんは涙ぐんでいた。 遠いところからありがとう、あの人も喜ぶわ、と何度も言われた。 おれは監督の写真を見て、心からほっとしてい…

曖昧に滲んだ男が、おれを見つめている。 光のない目が、おれの奥の奥まで裸にする。 嘘つきめ。 猫を被っただけの意地汚い人間め。 そう目が訴えている。 そんなことを言われたって、お…

忘れられない景色をめぐる、小さなお話です。 企画「ペーパーウェル12」参加作品。お題：空で書きました。

お母さんには友達があまりいない。 数少ない友達には、愚痴を言いづらいのだろう。 だから仕方ない。 私が聞いてあげるしかない。 あんたしか話せる人がいないんだから。 そう言われると…

時間の止まった部屋の中で、いなくなった恋人を思い出すお話です。 Twitter企画「ペーパーウェル11」参加作品 テーマ：時計・時間

兄ちゃんの目が怖かった。 親父に殴られるのも怖かった。 「ミチルも来るか？　ミチルとだったら、一緒に生きてもいい」 兄ちゃんはまっすぐおれを見た。 その目は深い海の底みたいで、…

眠って次起きるとき、おれはこの世界にいるだろうか。 ぬくもりは、麻薬だと思う。 一度知ってしまうと戻れない。 おれは怖くなった。 新のぬくもりがなくなってしまうことを想像して、…

Twitterの創作企画「ペーパーウェル」で発表した短編小説。 お題は「緑」 リサのいつもの朝、繰り返す幸せな日々です

今を生きなければならないと頭では分かっているのに、心は過去を生きたいと言う。 こんな私を、そうくんはどう思っているのだろう。 小学6年生のそうくんと過ごす、ハロウィンの夜の話。…

祖父ちゃんの住む田舎の山に、不法投棄する奴らが来る。 積み上がっていく粗大ごみの山。 もう我慢ならない。 村のジジババ総出で立ち向かう！ 孫の俺はただ、傍観しているだけ！ ペー…

手を伸ばそうとしても、ぬくもりは手に届く前に離れていく。 海に浮かぶ島を想像する。 水面から体をどっしりと出した島は、全部女だ。 アーリーは先週から頭に女を飼い始めた。 髪全体…

しんどくなった「私」が光と闇の狭間の青で漂いながら考え事をする、ちょっと不思議なお話。 「ペーパーウェル07　そらから降る」参加作品。 「カモメのお姉さんと、夏の約束。」 ht…

私の目には、人の感情が文字になって見える。 人の周りに、まるで雨のように言葉が降ってくるのだ。 教室は、いつもたくさんの感情で溢れている。 桃花さんの周りにはいつも「さみしい」…

私は小さな村で育った。 山と田んぼがあるだけで他には何もなかったが、それが私の全てだった。 不自由など感じたことはなく、ただただ自由だった。 なんでもできそうな気がしていた。 で…

陸地に縁取られた海面と、鮮やかな緑。 わたしは初めての一人旅で、ようちゃん先輩が生まれた町に来た。 海を眺めていると、ある女性に声をかけられる。 ようちゃん先輩に思いを馳せるわた…

心が宿ったモノたちの、初々しくも苦い恋のお話。 □ネプリ同時配信企画『ペーパーウェル』 （ @n_paperwell ） 第4回 テーマ：文房具 開催期間：2020/6/6(…

恋人にこっぴどく振られた帰り道、主人公は透明な翅の蝶に出会う。 蝶に導かれるまま歩いた先で出会ったモノとは。 日常から非日常へ誘われる一夜の物語。 ネットプリント企画「#ペーパ…