「３６５」を含む小説

こんなプロット、読者が怒るに決まっているでしょう。なになに、ミステリー小説で、ヘンテコな館に閉じ込められた主人公たちがいて、犯人はなぜか密室から脱出して何食わぬ顔で容疑者から外れ…

白衣を着た男性は、物憂げな表情でカプセルを見上げた。人がひとり収容できる大型のカプセル。それはタイムマシンだった。「もう、未来の医療に賭けるしか……。それしか、方法が思いつかんの…

死体が動くはずはないと、昨日まではそう信じていた。

マンションの一室、殺人事件現場にて。ふたりの刑事が頭を悩ませていた。「もう助からないと悟っていたのでしょうか」「それにしても、死を目前にしたら誰だって救急車くらい呼ぶだろう。しか…

「なにから？」「えっ」「今は戦時中でも、ここは危険な異世界でもないわ。私をなにから守ってくれるの？」

声をかけられたのは、半世紀を生きた主婦だった。庭いじりの最中、麦わら帽子すら突き刺すような日差しの下で、やけに透き通った声を聞いた。

惑星は違えど、同じ起源を持つのか。あるいは神の悪戯か。「やあ、おかえり」「やっと帰ってきたよ。長旅だった」地球旅行からの帰りだった。

「まったく、なにをやっているんですか……。もう少し気を付けてください」過労に足元がふらつき、車道に倒れ込んだ直後だった。迫る乗用車のライトを浴びた瞬間、背中をぐいっと掴まれ、歩道…

「じゃあ、ステ振りしていこうか」「おすすめ教えて」「レベルによって重視するステが違うんよ。差が出るのは7以降」

「すみません、どうしてそんなことをしているのですか？」思わず、声をかける。見慣れない人だったからだ。

イヤモニに音が届いた。サングラスからの映像を確認したのだ。「絵を感知しました。当美術館のデジタル案内システムは、お客様に受付でイヤモニとサングラスを配布し、サングラスのカメラから…

休日の昼下がり。俺が別れ話を切り出した途端、彼女はふいに泣き出した。「どうして」「他に好きな人ができたの」「私になにか悪いところがあったの」。そう、という訳ではない。誓って俺は不…

遠くから山道を登ってくる車に向けて、両手を大きく振る。「すみませ〜ん、すみません！」。男が小さく跳躍のような動きをすると、車は目の前に勢いよく止まった。アスファルトの摩擦音が響き…

魔法と見分けがつかないらしい。

「どうしてだ。あの怪人に刀の攻撃は通用するはず」「そうだ、特殊なバリアがある訳じゃあない。しかし、さっきから何度試しても刀が食い込まないんだ」

きっと大規模な地震だろう。こんなことなら、あてもなく家電量販店をうろうろするのではなく、さっさと家路に着けばよかった。おかげで、今にも瓦礫に圧し潰されそうだ。

下校途中。部活の後。日暮れが早くなった9月。虫の音。風の触感。秋の匂い。秋霖で濡れたアスファルト。

それは思いのほか、鼻に残る良い香りだった。よくよく見ると濃い茶色にも見えるが、ゆっくり観察している暇はなかった。ビルの谷間から、家屋の隙間から。全てを飲み込むそれは、あっという間…

とっくに過ぎていますよ？」「すみません、子供が泣くもので」「今どちらですか？」

大学に進学して、そこそこの会社に就職して、結婚適齢期に結婚し、子を儲け、家を持つ。仕事に邁進し、あるいは専業主婦になり、慎ましい老後を過ごす。孫と笑い、趣味を嗜み、親族に囲まれて…