犯人はDIYの達人

結騎 了

#365日ショートショート 284

「まったく!馬鹿げている。ええ? 先生。あんたふざけてるんですか。こんなプロット、読者が怒るに決まっているでしょう。なになに、ミステリー小説で、ヘンテコな館に閉じ込められた主人公たちがいて、犯人はなぜか密室から脱出して何食わぬ顔で容疑者から外れていたと。その理由が、犯人がDIYの達人で部屋に自分で隠し通路を作ってそこから抜け出した、だって。おいおいおい、馬鹿を言ってもらっちゃァ困るよ。どこの読者がこれに納得するんだい。いくら達人や専門職だったとしても、そんなホイホイと簡単に出来るはずがないでしょう。いいかい、専門職だとしても、しっかりとした準備や入念なリサーチ、材料や資料の調達、そしてトライ&エラーが必要なんだ。すぐにそんな、パパっとできるはずがない。読者にそう突っ込まれて鼻で笑われますよ。まったくもう。いいですか、もう締切は間近なんです。今晩は徹夜でもして、明日の朝にはまた新しいプロット、原稿用紙50枚くらいのものを持ってきてください。いやいや、できるでしょう、あなた小説家ですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犯人はDIYの達人 結騎 了 @slinky_dog_s11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説