「わたし 純文学」を含む小説

あまり人のこない美術館の監視員をしているわたしは、毎週決まって火曜日にやってくる老婆に気がつく。全身黒い服でやってくる老婆は、きっかり30分かけて展示室を出ていく。その背中は弔い…

恋は秘してこそ深くなる―― わたしの軀も魂もあなたのもの ５分で読めるショートショート９３作品目 独白スタイルです

奇病にかかり、わたしは寝たきりの生活を余儀なくされていた。 自由に身体が動かせなくなって恐怖で絶望するわたしの唯一の救いは大好きな彼氏だけだった。 しかし、そんな姿を彼に見られる…

大学生活の一歩目で転倒した。 ひとりぼっちのわたしが、もやを振り切るための深夜の散歩。歩道橋を踏みしめて上る。 そうしたら、わたしは宇宙に昇っていた。

　息をするだけで疲れてしまう毎日ですが、わたしは元気なのでしょうか。二十歳の誕生日が来てしまったので、わたしは首を括ります。もう決めたことなのです。

浮気ばかりしていた旦那が死んだ。 棺には思い出のくまのぬいぐるみを添えた。 それがまさか、帰ってくるなんて…。 15年前の姿で現れた旦那と再スタートする結婚生活。 でもそうか、次…

KAC2023お題「ぬいぐるみ」 ぬいぐるみが苦手、ダニが増えそうだから。そんな女性がある日街コンで出会った男性とゲームセンターを通り掛かる。 「わたし、UFOキャッチャーって…

11月。受験を控えたある少女は勉強もせず、古本屋でいつものように立ち読みをしていたところを、店主であるおじいさんに見つかってしまう。それは少女にとって代わり映えのない出来事のはず…

クラブで同僚にハブられたわたしは小学生の頃の夢を見る。仲良しだったキイ子ちゃんは、わたしをハンカチ落としに誘うのだった。クラブで踊るよりずっと楽しい。昔の友達も次々に現れる。これ…

毎朝、早起きをしてお化粧をして 家族のために朝ごはんをつくる―― ５分で読めるショートショートショート６６作品目 １００作品まで毎日公開！

デジタル決済サービスやサブスクリプションを何の迷いもなく利用する母と、その手のサービスに違和感を持つ「わたし」。正月に帰った実家で、母が正しいのか、自分が正しいのか、「わたし」は…

「わたし」と恋人の有馬くんとの、卵焼きをめぐる他愛のないやりとり。それはとても微笑ましい光景で、でも、ふたりの未来にまちうけるものを、わずかに暗示しているのかもしれなくて……。 …

真っ赤な口紅。真っ赤なダッフルコート。シノノメさんのセンスはいつだって私をドキドキさせる。これは恋だ。潮の香りのする恋。その先はおそらく冷たい深海へと続く、真っ暗で真っ赤な恋。二…

「サキのタトゥー、好き……」 「可愛いでしょ。お気に入りなんだ」 　たわれるように舞う二匹のジャコウアゲハ。一目で魅了されてしまった。蝶の羽を描いている繊細なグラデーションに、い…

久しぶりに実家に帰ったら―― 親の老いを感じたとき、あなたはどうしますか？ ４０字×４０行で書いているショートショート４１作品目 １００作品まで毎日更新出来るかな？

高校生になって最初のテストで大失敗してしまった。 それがきっかけなのか、夜は眠れなくなり、ストレスを感じると左腕を掻くようになってしまった。 誰にも言えなかった。みんなの期待が、…

彼に存在も知られずに、ずっと見ているだけでよかった。わたしは可憐な花ではないから。憧れのひとは清らかで端正で。だからわたしは、ずっと見続けるの。うつくしい彼のことを。だってわたし…

人間が巨大な毒虫になるウイルスが蔓延している世界で生きる人々の話。