アクアリウム・エアリウム
根ヶ地部 皆人
アクアリウム・エアリウム
巨大な水槽の中で、調整された塩水でいっぱいの水槽の中で、色とりどりの魚が舞うように踊る。
一匹の蟹が水槽の底でぷくぷくと小さな泡をたてるのを見て、彼女は言った。
「わたしたちみたいね」
こちらへ向かってハサミを振り上げる蟹をガラス越しにつつきながら、彼女は言った。
「地球も水族館みたいだね」
エサに困らぬ魚たちは縄張りを争うこともなく、悠々と泳ぎ続ける。
広大な水槽の中には薄青い闇と、束縛された平穏が満ちていた。
水族館を出ると、彼女は青空へ両手を広げた。
「見てますか? 見てますか?」
ガラスの向こうの蟹がしたように、大きく腕を広げて言った。
「見えてますか?」
見てますか?
見てますか?
ボクらはここで生きています。
喰らいあい殺しあい、死んだり滅んだりを続けながら、ボクらはそれでも生きています。
「見てますかー?」
見えていますか?
あなたに見捨てられたこのエアリウムの底で、ボクらはまだ生きています。
アクアリウム・エアリウム 根ヶ地部 皆人 @Kikyo_Futaba
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