「いや童話かも？」を含む小説

大人の日常に童話を。 たまには神話、ときには聖書、誰かの伝記を開く日もある。 「ない」と感じていたものは、本当はもうそこに「ある」。

大人の日常に童話を。 水風船も、ガム風船も、とりどりの色を思い出す日に。 おヒゲをはやしたおじさんも、昔は子ども。

大人の日常に童話を。 猫の背中を撫でながら、かぎ針を扱いながら、揺り椅子を揺らしながら。 時間の流れは、ごくゆったりと。

大人の日常に童話を。 公園で、レストランで、映画館で。 誕生日を指折り数えているのはだれ？

若く美しい王様が、ある日とんでもないことを言い出した。 「――この国で一番パン作りが上手い娘を、僕の妃にする」 きっかけは十日前のこと。お忍びで町に行った王様が、小生意気で陽気な…

おとなの日常に童話を。 窓の外に空が見える日に、三日月が黄色い夜に、昼と夜のその合間に。 星空はいつも親しみをこめて。

おとなの日常に童話を。 眠れない夜に、寝過ごした昼に、ぼんやりしたい夕方に。 無条件の愛は海ににている。

おとなの日常に童話を。 コーヒーに砂糖をいれながら、流す音楽を選びながら、寝室の灯りを消す前に。 また明日、おいしいカフェオレをいれましょう。

おとなの日常に童話を。 横目でウィンドウショッピングをした日の夜に。 差出人不明の手紙が届くのも悪くない。

おとなの日常に童話を。 食器を洗う合間に、洗濯を待つ間に、雨が上がるのを待つ間に。 野の花は咲く場所を選ばない。

おとなの日常に童話を。 湯船につかりながら、思い出に浸りながら、眠りの暗闇を見つめながら。 まっしろいゆりかごをみおくる日。

おとなの日常に童話を。 紅茶を淹れながら、テレビをつけながら、ビスケットを摘みながら。 冬来たれば春遠からじ。

おとなの日常に童話を。 花咲く季節、雨ふる季節、熱帯夜にも。 一人でトランプをめくるのも一興。

誰よりも高く飛ぶことのできる鳥、カンムル。その心は自尊心と優越感に固められているがそこにはどこか隙間があるようで…。それでも愛を知らないカンムルはただ抗う。 愛を教える者はだれで…

負けん気だけは世界一。そんな爺さんは今日も婆さんに意図的に動かされる。だけど、ちょっぴり良い方向に 世の中は向かう。

おとなの日常に童話を。 行列に並びながら、信号を待ちながら、子どもを膝に乗せながら。 再会あれと願いを込めて。

おとなの日常に童話を。 音楽を聞きながら、配達を待ちながら、枕を抱きながら。 岩になりたいと望んだ悪魔。

おとなの日常に童話を。 ベランダで煙草を吸いながら、一人でココアを飲みながら。 変わるものと変わらないもの。

おとなの日常に童話を。 休日の喫茶店で、混み合うバスの中で、雨宿りの間に。 忘れない、ひだまりの日々。

おとなの日常に童話を。 通勤電車の中で、ランチタイムに、夜の眠りにつく前に。 いつかの日を思い出して。