「ちょっと大人」を含む小説

その犬は鳴かなかった。声を失っているのではない。ただ鳴く機会を伺っているのだ。母親の虐待がもとで、恐怖のために声を失ってしまった赤ん坊。彼らはいつも寄り添うようにぴったりと体をく…

僕の行く手はいつも雲の中のようにぼんやりとしている。頼りにしている道しるべの「線」は、途中で途切れてしまう。あっちに行ったり、こっちに行ったり、しているうちに、気づくとみんなは怒…

彼には盗癖があったが、運命的に出会った彼女との平凡な幸せを夢見て、まじめに暮らそうと努力する。ある日、彼女は祖母の形見だというペンダントを彼にみせる。涙型をしたそれは不思議な色に…

「昨日、眠っていたら枕元に神様がきてね、私を天使にしてくれるって。そう言ったの」さゆりちゃんは言った。私はさゆりちゃんがうらやましくて、さゆりちゃんのお弟子さんにしてもらうことに…

ランドセルの中には色々なものが詰まっていた。けれど、どの中身も僕の興味を引かない。ランドセルには毎日、与えられたものが詰め込まれていく。やがて、ランドセルはいらないもので溢れかえ…

僕はドーナッツが大好きだ。僕は家族から離れ、施設に入れられた。でも、家族はつながっている。ドーナッツのように。ドーナッツの上を歩いていれば、いつかは元に戻ることができる。

森の子供たちはまず、うさぎの狩りから教わる。うさぎ、キツネ、鹿、イノシシ。そして、最後はクマだ。森の子供たちはそうやって大人になっていく。ギーはうさぎの狩りができなかった。うさぎ…

子供の頃、６本指の男の子がいて、私はその子に憧れていた。何か自分だけの特別なもの。私だけの大切なもの。私はずっとそれが欲しかった。ある日、健康診断で見つかった小さな肝のう胞。それ…

きりんは僕の通う店にいた。彼女の願いは叶えられた。けれど、願いが叶い過ぎた彼女は不安を抱えている。心配しすぎて不眠症のきりんと間もなく寿命を迎える僕、ねずみ。僕らが望むのは、ささ…

『モノクロオムの庭』：昨今流行している「テラリウム」。祖母といがみ合うMもまた、自分だけのテラリウム造りを始めるが…。 『銀のお妃』：「サンドリヨン」と呼ばれた少女は、若いお妃に…

ちょっと大人の二人が明日をどう過ごすか悩むお話です

「水曜日の彼女2nd season」スタートします(〃ω〃) 番外編スピンオフ 「水曜日の彼女〜Another stories〜」も宜しくお願い致します(〃ω〃) 僕は、立…

Twitterタグ「#キスシーンを14字で書く」から着想を得て、生成。 ちょっと大人？　ちょっとだけ、ちょっとだけ。珍しい明里の恋愛ジャンル。 というか、多分初めての「恋愛」ジ…

「男と女がラブホいったらやることなんて決まってるじゃん」 そう昔、友人が言ってたことがある。 でもそれって本当にそう？そうだったらなんでこんなことになってるの？ わたしはやる気満…

　砂浜で夏を過ごす、うたかたの物語。 　自主企画「夏の過ごし方」への書き下ろしです。 　ちょっと大人の夏をどうぞ。 　主人公≠作者です。念のため。

「愛してます」 「私は愛してないわ」 　高橋くんは、身だしなみにうるさい。いつもスーツの内ポケットに忍ばせてるコンパクトミラーを差し出すと、こちらに向けて私の顔を映してみせた。 …

アリアとギルが海辺の町で暮らし始めてから半年、ギルが倒れるように熱を出した。過労からくる風邪ということでアリアは心配しながらも看病するが、ギルは何だか嬉しそうで……。ちょっと大人…

　超アイドルの女の子の春から梅雨の終わりまでの心の成長物語。 　飛ぶ鳥落とす売れっ子アイドル「伊藤まり」は浅草生まれ、浅草育ち。浅草六区居を構える寄席「安馬亭」の十四代目（住まい…

《更新停止》 　無職になったら神になって嫁ができた。……なにを言ってるのか自分でも解らないが、全くそのまんまの状況だ。とりあえず新神研修として上神（上司）が管理している世界の一…

日本一深い湖、田沢湖には「辰子姫伝説」という伝説があった。それは、永遠の若さと美しさを求めた美少女が、龍に変わってしまうというものだった―― 秋田県南部にある田沢湖を舞台にした、…