あのころと再会の砌

白早夜船

プロローグ

 まただ。また私の好きになった人には、別の好きな人がいた。いつもこうだった。そして両想いになるのも大抵その二人なのだ。私じゃない。私はむしろその二人がくっつく後押しをして、陰から見守るだけ。奪い取ろうという気は全然湧かなくて、二人の楽しそうな笑顔を見ていられれば、それでいい。そうやって恋慕や嫉妬をほのかな満足に変えて、私は自分を納得させてきた。


 誰に言うでもない失恋を、私はそうやって置き去りにしていく。ずっと胸の内に秘めたままにして。そしていつか時効になったころに、「実は私も好きだったんだよ」なんて笑って、きっと青春の思い出にするのだ。だからいつまでも執着したりすることはない。

 いつものパターンだ――そう思ってた。

 だけど、今回は……。もしかしたらこれまでは、本気で好きになった人が単にいなかったというだけなのかもしれない。


 だって、そうでなかったら、今のこの気持ちは……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る