彼女にフラれたら出会いに凄く報われた件

烏瓜蜜柑

第一章

第1話 終わり

この世には運のいい人間と

悪い人間がいると思う


ちょっとした運の悪さではなく、

波に乗ってきたときに

そのまま乗れるか、

落とされるか


俺は運のいい人間だと思っていた。

彼女もいたし、親友もいた

だが、本当に俺は運がなかった。


♦️♦️♦️


クリスマスが目前に(と言ってもまだ2週間以上あるが)迫ってきた頃、俺は大学の親友の1人である木崎智樹きざきともきと一緒に彼女へのプレゼントを買いに近くのショッピングセンターに来ていた。


「なあ智樹、俺のセンスが悪いのか?」


プレゼントを買いにきたのだが、その前にと服屋でお互いに着せ合いをしていたのだが、俺が選んだ服を智樹に見せると、露骨に一瞬顔を顰め、その後着替え終えて出てくると、必ず「俺も昔はそうだったさ」と哀れみの視線を向けながら言ってくる。


「安心しろ蓮。俺も昔はそうだったさ」


「頼むから俺にも教えてくれない?ファッションについて」


「俺は那月に教えてもらった叩き込まれたからなー。なんかどの服がいいとか見るだけでわかるようになったんだよなー」


那月とは智樹の彼女で歳は1つ下だ。自己紹介をしよう、俺の名前は八代蓮やしろ れん、20歳で大学3年だ。


「那月ちゃんはファッションチートの持ち主だからか、お前のその血を分けてもらったんだな」


「言い方はあれだがそんなところだ。まあ確かにお前のデートのたんびに服を選ばされるのもあれなんだよな」


そう、俺が彼女の和田綾沙とのデートの時に来た服は全て智樹が選んだ服なのだ、お陰で今のところファッションセンスについては高評価になっている。


「やっぱそうだよなー。裕也なら教えてくれるかな?今度頼んでみよ」


「確かにあいつなら教えてくれそうだな」


結局俺は選んでもらった服をいくつか買い、智樹は1着も買ってくれなかった。ちょっとくらいネタ枠あってもいいのになぁ


「じゃ!そろそろプレゼント買いに行くかぁー」


智樹がノビをしながら言ったので、俺も賛同する。


「そうだな。そういえば裕也は誘わなくて良かったのか?」


紹介を忘れていたが裕也というのは俺のもう1人の親友だ。

あいつには美玲ちゃんという激かわ彼女がいる


「あいつはもう買ってるからいいんだとさ。俺も1人で行こうかと思ってたんだけどお前のセンスだと綾沙ちゃんに凄いものを渡しちゃいそうだからそれを阻止するべく誘ったんだよ」


なんていいやつだ。俺まじ泣きそう。


「ありがとう。心の友よー」


「安心しろ、ちゃんと飯奢られてやるよ」


そのセリフにふと女友達の内海芽衣うつみめいの姿が思い浮かび苦笑いする


「お前だんだん芽衣に似てきてるなぁ」


「まじ?美形になってる?」


芽衣は高校からの友人で、その顔立ちの良さから大学でもかなり有名だ


「お前は元からイケメンだろ、流石に裕也には敵わないけど」


「そうか?まぁありがと」


「どういたしまして」


そんな雑談を楽しみながら歩いていると、智樹がいきなり足を止めた。俺も2歩進んでから足を止め、振り返る。


「どうした智樹。500円玉でも落ちてたか?」


「多分お前が見たら絶対に立ち直れないと思うけど、俺は見たほうがいいと思う」


智樹が真剣な顔でいつもより小声でそう言ったので、俺は怪訝な面持ちになる。


「どういう、ことだ?」


返事を聞かずに智樹と同じ方向を見て、俺は目を疑った。


「あや、さ?」


綾沙が、(少し離れているので本人の確証はないが)知らない男と手を繋いで歩いていた。


「大丈夫か?」


固まった俺を見て心配した智樹が声をかけてきたが、なんと言っておるのかは聞き取れなかった。


「すまん、今日は、帰ってもいいか?」


実はすごく似ているだけで別人なのかもしれない、ただ、彼女の佇まいや遠くからでも見えるだけの笑い方が、そして最近どこかよそよそしいと感じていた俺の心が、そんな考えを塗りつぶしていた。


「わかった、何かわかったら連絡するよ、気をつけてな」


心配そうな声で言いながらも、1人になりたいと言う気持ちを汲み取ってくれたのか、送って行こうとはしなかった。


その日家に帰った後、智樹からラインが来ていた。見ることを躊躇いながらも、もしかしたら、と言う気持ちを捨てられずにメッセージを開く。


『すれ違いざまに確認したけど、多分綾沙ちゃんで間違いないと思う』


わかっていたことだが、やはり辛い。俺はその次の日、一方的に別れを告げた。ブロックしようかとも思ったが、それはなんだかガキっぽいと思いやめた。


♦️♦️♦️


俺は少し気持ちの整理がついて、今日は久しぶりにみんなと会った。俺が浮気されてたことを知ると動揺し、何とか俺を慰めようとしてくれる。正直俺はそういった姿を見るのが嫌だったが、心配してもらえるのは嬉しかった。今日は偶然休んでいた芽衣にも、報告しておこうかなと思ったので、電話をかけていた。


「…。そんなわけで、あいつとは別れることにしたんだ。」


『なに?クリスマスを前にしてフラれたの?あんたどんだけ日頃の行い悪いのよ』


電話越しに元気な笑い声が聞こえてくる。こんな反応をされると不快な思いを抱く人もいるだろうが、俺としては変に気遣われずにいつも通り接してもらえて嬉しかった。


「別にフラれたわけじゃねーし」


『強がってやんの。ははは、駄目。笑い止まらない』


「ほんと性格悪いな!」


『ごめんごめん。ツボっちゃった』


とは言えここまで笑われると嫌にもなるが


「……」


『ごめんごめん。拗ねないでよー』


未だ笑いを我慢している息遣いが電話越しに伝わってくる。イヤホンを使って電話をしているから、細かく伝わってくる。


『それにしても、もうすぐにクリスマスになっちゃうねー』

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