第2話 そして始まる

今は芽衣と電話中。


『それにしても、もうすぐにクリスマスになっちゃうねー』


「そうだな。またクリボッチに戻るのかー」


『そっか!予定なくなるんだ。じゃあうちのサークルのクリパくる?1人までは招待していいことになってるんだよね』


「いやいや、そこは女子誘えばいいだろ。なんで俺なんだよ」


『せっかく誘ってあげたのに。私が誘ってこない男なんてあんたくらいのものよ。いいじゃない、クリスマスくらいで楽しみたいの』


「なら美玲、、、は裕也と過ごすのか」


『そう言うことよ、まあ行く気になったら連絡して。』


「了解。ありがと」


やっぱりなんだかんだ芽衣はいいやつだと思う。俺が芽衣と仲良くなったのは、性格に難があって俺と同じボッチの仲間入りしたからだ。いや、正確にはそうはいえないが、お互い周りと一歩引いて関わっていたので、相性が良かったと言うのだろうか、気付いたら1番よく話す人となっていた。


「サンタがくれたものって全部奪われるんだよなぁ」


『なに?サンタ信じてる系男子?』


「そうじゃなくて。俺がクリスマスに手に入れたものは大体取られるなーって思って」


そう言うと、芽衣はなにが言いたいのか察したのか『あぁ』と呟いた


『あんたが付き合ったのは、去年のクリスマスの日だったんだよね』


見えてはいないがきっと哀れんでくれているのだろうなと感じ頷く


「ああ。それだけじゃない、子供の時のプレゼントも大体はりんに盗られちゃったからなぁ」


凛というのは俺の1つ下の義理の妹だ。すごい美少女だが、残念なことにラブコメみたいな展開は来る気配もせず、普通に仲のいい兄妹だ。


『そっか。でもやっぱりまだ引きずってるんだね。元カノ』


「さすがにこんな短期間じゃ吹っ切れないな。1年も付き合ってたんだ」


『まあそうよね』


「まあなんだ。お前のおかげでだいぶ良くなったよ、ありがとな」


『それは良かった。私もあんたがいないと何かとうまくいかないのよ』


少しドキっとした、電話越しとはいえ芽衣ほどの美人にそう言うセリフを言われて反応しない奴はいないだろうが。


『もちろん財布がね。あんたがいないと奢ってもらえないからお金が減っちゃって』


「俺の気持ちを返してくれ!」


『ご飯の代わりに食べちゃったわ』


その後、少し雑談をして電話を切った


その日は、久しぶりにしっかり眠れた


♦️♦️♦️


街を彩るイルミネーションは美しいが、その分カップルも多い。そんな所を通れば隣に誰もいないことを嫌でも意識させられる。

少し歩き、人通りの少ないところに出る。はぁーっと白い息を吐き、また家へと向かう。

また少し歩いていると、前を歩いていた女性が男性の数人のグループの1人とぶつかって倒れる


「きゃっ」


「すいません」


ぶつかった人は何事もなかったように通り過ぎていったので俺は代わりに声をかける


「大丈夫ですか?」


「はい、、、あ!」


その女性(すごく可愛いので一瞬見惚れてしまった)は顔を向けると少しして思い出したように声を上げた


「お兄ちゃん先輩」


「えーと、会ったことあるっけ?」


会ったことあるようなセリフに少し驚く


「いや、凛ちゃんのお兄ちゃんですよね?」


それを聞いて納得する


「凛の友達か!」


「はい!何度か見かけたことがあって。」


「そうか。これからもあいつとは仲良くしてやってくれ」


「もちろんです!あの、私彩葉いろはっていいます」


「苗字は?」


「彩葉です」


「いや苗字」


「彩葉です」


「みょ「い・ろ・は!です!」……そうか。」


頑なに名字を教えようとしないが、何か事情があるのだろう。


「じゃあ彩葉でいいか、俺は八代蓮、、、ってまあ知ってるか」


俺は立ち上がり、


「じゃあまたな、気をつけて帰れよ」


帰るまでの道のりは、不思議と足が軽く感じられた




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る