「消えたい」を含む小説

　寒風の吹く街の広場でベンチに座り、葉を全て落とし寒々と立つ鈴懸の樹を力無く見上げながら、妻が来るのを待つ男。そこに犬を連れた風来坊の老人が現れ、男に話し掛ける。悄然とした男の様…

臣と呼ばれる地方に 里の者が決して立ち入ることのない山があった。 その山は嘗ては「天狗山」と呼ばれていた。 しかし、長い歴史の中で その山の名前は人々の記憶から消えていった。 た…

19世紀、フランス、パリの街で相次ぐ失踪事件。ベテラン刑事、ロイド・ティンガ―刑事は新米刑事、ピエール・ウィルバン刑事とともに、難航する捜査に頭を抱えていた。霧に隠された街の中、…

SFの可能性がある。

海に消えてしまいたいと思っていた。 甘くないココアが愛おしかった。 もしかしたら、と思っていた。 夏の海は、ぬるかった。 だから心地いい。そんな口づけ。そんな誓約。 健やかな…

お互いの身体を交換する夫婦。 理解者のいない愛情の間で消えゆく両親を見届けた少年が語る愛情の終着地点。

僕はずっと考えている。 何度も、何度も。

プロ棋士の卓（すぐる）は大敗した。 ――もう昔のように勝てない。四十歳手前になって、そのことに気づく。 生活のために、これからどこに転職すればいいのか途方に暮れる卓。 家では、…

　筒井奈津は高校二年生。友達も多く誰もがリア充だと思っているが、本人にはそれほど充実感はなかった。 　奈津はクリスマスイブのデートで流されるように大学生の黒瀬悠樹との初体験を済ま…

家族からも必要とされてなかった"僕"はある日、高級車に轢かれて死んでしまった。 消えかけた"僕"の魂を救ってくれたのは、《アウルゼファー》という自我を持つ巨大ロボ。 "僕"に…

太古の昔。 人々は巫女の犠牲の上に成り立つ幸せを甘受していた。 巫女の力が失われるからと人としての幸せすら禁じて。 そんなある日、巫女は男装してお忍びに出る。 そこで経験した恋が…

凍った林檎が、中身が腐って流れ落ち、氷の器のみになったもの、それがゴーストアップル。

【殺伐感情戦線：第127回 お題「嫉妬」】 　こんなふうに在りたいと願ったことは一度もない。幸福に満たされていられるのならそれがよかった。さもなければ、あの子のように。 　神な…

原田巴は高校一年生。（ボクっ子） 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂って…

いつものように、SNS上で馬鹿な事を言ってる奴を論破しようとしたら……何故か、全財産が……。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「Novel Days」「ノベリズム」「GA…

実母に追い出された。 全く親父の奴！勝手に消えやがって！ 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……その再婚相手は働きもせずに、好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から…

人の言葉が分かる猫「石松」は地域猫として放浪していたが、目の治療で運び込まれた動物病院で獣医師多村伊知郎と出会う。多村も猫の感情を読み取れることからお互い交流を深めていった。 石…

世界中にゾンビが溢れた。 ホラー映画やアクションゲームとは違い、現実のゾンビは人を襲わなかった。 ゾンビになった元人間たちの「死後」の幸福を実現する仕事に就いた「俺」は、消えない…

元社畜・忍の転職先は、東雲製作所。見た目は普通の工場だが、その製品は「積雲」「レンズ雲」「入道雲」と言った本物の雲だった。 いつか消えてしまうものに、そこまで情熱をかける意味が…